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気分の波、もしかして双極症II型?「軽躁」に隠された真の苦悩とサポート
「なんだか気分が良い日が続くけれど、なぜかイライラしやすい」「いつもより活動的なのに、うつ状態の時の方が圧倒的に多い」。
もし、あなた自身や大切な人が、このように一見穏やかな「気分の高まり」と、それ以上に頻繁で深刻な「落ち込み」を経験しているとしたら、それは双極症II型と呼ばれる精神疾患の症状かもしれません。双極症I型が「激しい躁状態」を特徴とするのに対し、双極症II型は**「軽躁(けいそう)状態」と抑うつ状態(うつ状態)**を繰り返すのが特徴です。
「軽躁状態」は、本人も周囲も気づきにくく、「元気な時期」「調子の良い時期」と見過ごされがちです。しかし、この軽躁状態の後に続く深刻な抑うつ状態こそが、双極症II型の真の苦悩であり、日常生活、学業、仕事、人間関係に大きな影響を及ぼすことがあります。
この記事では、双極症II型が具体的にどのような病気なのか、どんな症状が現れるのか、そして何よりも、ご本人やご家族がどのようなサポートを受けられるのかについて、分かりやすく解説していきます。正しい理解と適切なサポートが、この「見えにくい」気分の波を乗り越え、安定した生活を送るための第一歩となるでしょう。
双極症II型って、どんな病気?
双極症II型は、**「軽躁(けいそう)状態」と「抑うつ状態(うつ状態)」**という気分の波を繰り返す精神疾患です。双極症I型が「躁状態」を特徴とするのに対し、双極症II型では「軽躁状態」が最低4日以上続くことが診断基準の一つです。
脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)のバランスの乱れが関係していると考えられており、遺伝的要因やストレス、生活リズムの乱れなどが発症に影響すると言われています。性格の問題や、努力不足で発症するものではありません。
発症は思春期から成人早期にかけて多く見られますが、軽躁状態は本人が病気と認識しにくいため、うつ病と誤診されやすいという特徴があります。これにより、適切な診断や治療にたどり着くまで時間がかかるケースが少なくありません。
どんな症状が現れるの?
双極症II型の症状は、主に以下の二つの気分エピソードとして現れます。
- 軽躁状態(けいそうじょうたい): 少なくとも4日以上続き、普段とは異なる気分や活動性の高まりが見られる状態ですが、日常生活に著しい支障をきたすほどではないのが特徴です。入院が必要になるほどの重症化はしません。
- 気分の高揚・開放感、または易刺激性: 理由なく気分が良い、自信がある、開放的になる。一方で、些細なことでイライラしやすくなったり、怒りっぽくなったりすることもあります。
- 活動性の増加: 普段より眠らなくても平気、次々にアイデアが浮かぶ、多趣味になるなど、活動量が増えます。
- 多弁: 早口になったり、たくさん話したりします。
- 思考の加速(観念奔逸): 頭の中で考えが次々と浮かび、まとまらないことがあります。
- 注意散漫: 集中力が低下し、一つのことに長く注意を向けるのが難しくなります。
- 衝動的な行動: 普段ならしないような衝動買い、軽率な行動をしてしまうことがあります。
- 抑うつ状態(うつじょうたい): 少なくとも2週間以上続き、日常生活に著しい支障をきたす、気分の落ち込みが強い状態です。双極症II型では、この抑うつ状態の期間が非常に長く、また頻繁に現れることが特徴です。
- 気分の落ち込み・憂鬱感: 何をしていても気分が晴れず、常に憂鬱な状態が続きます。
- 興味や喜びの喪失: 以前は楽しめたことにも関心がなくなり、喜びを感じられなくなります。
- 食欲や睡眠の変化: 食欲不振や過食、不眠や過眠など、食欲や睡眠のパターンに変化が見られます。
- 倦怠感・疲労感: 体がだるく、何もする気力が湧かず、極度の疲労感を感じます。
- 思考力・集中力の低下: 物事を考えたり、集中したりすることが難しくなります。
- 無価値感・罪悪感: 自分を責めたり、価値のない人間だと感じたりすることがあります。
- 希死念慮: 「死んでしまいたい」と考えることがあります。
双極症II型では、軽躁状態を「単なる元気な時期」と認識し、うつ状態の症状が前面に出るため、うつ病と誤診されやすい傾向があります。しかし、うつ病の治療で抗うつ薬のみを服用すると、気分の波が不安定になったり、軽躁状態が悪化したりするリスクがあるため、正確な診断が非常に重要です。
双極症II型の診断と大切なこと
双極症II型の診断は、専門の医療機関(精神科、心療内科)で行われます。診断には、問診、症状の経過、精神状態の評価などが総合的に用いられます。
- 詳細な問診と症状の確認: ご本人やご家族から、気分の波の有無とパターン、それぞれの気分エピソードの期間や強度、日常生活への影響などを詳しく聞き取ります。特に、過去の「元気だった時期」が実は軽躁状態ではなかったか、具体的なエピソードを詳しく伝えることが重要です。
- 精神状態の評価: 医師がご本人と面談し、思考、感情、行動の様子を詳しく観察します。
- 身体診察・検査: 症状が他の病気(甲状腺機能障害や薬物の影響など)によるものでないかを確認するため、血液検査などが行われることもあります。
大切なのは、双極症II型は診断が難しい場合があるということです。軽躁状態は「病気」と認識されにくいため、ご本人が自覚していないこともあります。ご家族が過去の「いつもと違う時期」の様子を医師に伝えることが、正確な診断に繋がる重要な手がかりとなります。
双極症II型のサポート:症状をコントロールし、安定した生活へ
双極症II型は、適切な治療と支援によって、症状をコントロールし、安定した生活を送ることが十分に可能な病気です。支援は、医療的なものだけでなく、心理社会的、社会復帰支援など、多岐にわたります。
1. 薬物療法
双極症II型の治療の中心は、薬物療法です。気分の波を安定させることが重要であるため、主に以下の薬が用いられます。
- 気分安定薬: 軽躁状態とうつ状態、両方の気分変動を抑える働きがあります。リチウム、バルプロ酸、ラモトリギンなどが代表的です。特にラモトリギンは、双極症II型のうつ状態に有効性が高いとされています。
- 非定型抗精神病薬: 軽躁状態の症状を抑えるために用いられることがあります。うつ状態や気分の安定にも効果を発揮するものもあります。
- 抗うつ薬: うつ状態が強い場合に処方されることがありますが、単独での使用は軽躁転(うつ状態から軽躁状態へ転じること)のリスクを高める可能性があるため、気分安定薬と併用されることが一般的です。医師の慎重な判断のもと使用されます。
医師の指示に従い、決められた量を決められた時間に服用することが非常に大切です。症状が落ち着いてからも、再発を防ぐために服薬を続ける「維持療法」が必要となります。副作用が気になる場合は、自己判断で中断せずに、必ず医師に相談しましょう。
2. 心理社会的支援(精神療法・カウンセリング)
薬物療法と並行して、心理社会的支援も回復に欠かせません。
- 精神教育: 病気についてご本人やご家族が正しく理解するための情報提供を行います。病気のメカニズム、症状、治療法、再発予防策などを学ぶことで、病気への理解が深まり、治療への主体的な参加を促します。特に、軽躁状態を病気の症状として認識できるようサポートすることが重要ですし、うつ状態の引き金を理解することも大切です。
- 認知行動療法(CBT): 気分の波に伴う思考の偏りや、ストレスへの対処法を学び、症状の悪化を防ぐのに役立ちます。
- 対人関係・社会リズム療法(IPSRT): 生活リズムの乱れが気分の波に影響を与えることに着目し、安定した生活リズムの確立と、人間関係の問題への対処法を学びます。
- 家族への心理教育: ご家族が病気への理解を深め、ご本人への接し方(例えば、軽躁状態の時に大きな決断をさせない、うつ状態の時に無理強いしないなど)、ご家族自身のストレスケアについて学ぶことができます。家族のサポートは、ご本人の回復にとって非常に大きな力となります。
3. 生活習慣の改善
規則正しい生活リズムを維持することは、気分の波を安定させる上で非常に重要です。
- 十分な睡眠: 睡眠不足は軽躁転の引き金となることがあるため、規則正しい時間に十分な睡眠をとることが大切です。
- 規則正しい食事: バランスの取れた食事を規則的に摂ることも、体調管理に繋がります。
- 適度な運動: 適度な運動は、気分の安定やストレス軽減に役立ちますが、過度な運動は軽躁状態を悪化させる可能性もあるため、医師と相談しながら行いましょう。
- ストレス管理: ストレスを上手に管理する方法(リラクゼーション、趣味、休息など)を身につけることが、症状の悪化や再発予防に繋がります。
4. 社会復帰支援と生活の場へのサポート
症状が安定してくると、社会復帰や自立した生活を目指すための支援も重要になります。
- デイケア・作業療法: 医療機関や福祉施設で行われるプログラムで、規則正しい生活リズムの獲得、作業活動を通じた集中力の向上、人との交流、社会参加への準備などを行います。
- 就労支援: ハローワークの障害者専門援助部門、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所など、病気の特性を理解した上で、仕事を見つけ、職場で長く働き続けられるようサポートする機関があります。高崎市にも、ハローワーク高崎や群馬県発達障害者支援センターなど、様々な支援機関がありますね。(2025年7月現在)
- ピアサポート: 同じ病気を経験した仲間(ピアサポーター)との交流を通して、体験を分かち合い、支え合う活動です。孤独感を軽減し、回復への希望を持つことにつながります。
5. 再発予防と早期発見
双極症II型は、症状が改善しても再発する可能性が高い病気です。再発を防ぐためには、継続的な治療と、ご本人や周囲が再発のサインを早期に察知することが重要です。
- 気分安定ノート/アプリ: 自分の気分の変化、睡眠時間、活動量、服薬状況などを記録することで、気分の波のパターンや再発のサインに気づきやすくなります。
- 再発サインの把握: 医師や家族と共に、自分にとっての軽躁状態やうつ状態の初期サイン(例:不眠、イライラ、多弁、食欲の変化など)を把握しておくことが大切です。
- 定期的な受診: 症状が安定していても、定期的に医療機関を受診し、医師と相談しながら治療を続けることが再発予防につながります。
まとめ:「見えにくい」気分の波と向き合い、安定した日々を
双極症II型は、軽躁状態が見過ごされやすく、うつ病と誤診されることで、適切な治療が遅れるケースも少なくありません。しかし、この「見えにくい」気分の波に気づき、正しい診断と適切な治療、そして生活習慣の工夫を行うことで、症状をコントロールし、安定した日常生活を送ることが十分に可能です。
重要なのは、病気を恐れずに正しい知識を持ち、一人で抱え込まずに、専門家や支援機関に頼ることです。
もし、ご自身やご家族、身近な方で双極症II型の症状に心当たりのある方がいる場合は、早めに精神科や心療内科を受診することをお勧めします。早期の診断と介入が、回復への道を開く鍵となります。
気分の波は、あなたの個性の一部ではありません。それは乗り越えられる病気です。希望を持って、自分らしい安定した生活を目指しましょう。
気分の波に振り回されていませんか?「気分循環症」のサインと、穏やかな日常への道
「なんだか気分が良い日が続くけれど、なぜかイライラしやすい」「いつもより活動的なのに、うつ状態の時の方が圧倒的に多い」。
もし、あなた自身や大切な人が、このように小さな気分の波が頻繁に訪れ、日常生活に影響を与えているとしたら、それは**気分循環症(Cyclothymic Disorder)**と呼ばれる精神疾患の症状かもしれません。双極症(躁うつ病)の一種ですが、双極症I型やII型のように明確な「躁状態」や「うつ状態」の診断基準は満たさないものの、軽度の高揚(軽躁状態に満たないレベル)と軽度の抑うつ状態(うつ状態に満たないレベル)が長期間にわたって繰り返されるのが特徴です。
気分循環症の症状は、その軽さゆえに「個性」や「性格」と見過ごされやすく、本人も周囲も病気であることに気づきにくいことがあります。しかし、この不安定な気分の波は、人間関係や仕事、学業にじわじわと影響を及ぼし、大きな苦痛や生きづらさにつながることが少なくありません。
この記事では、気分循環症が具体的にどのような病気なのか、どんな症状が現れるのか、そして何よりも、ご本人やご家族が安定した生活を送るためのどのようなサポートを受けられるのかについて、分かりやすく解説していきます。正しい理解と適切なサポートが、この「見えにくい」気分の波と向き合い、穏やかな日常を取り戻すための第一歩となるでしょう。
気分循環症って、どんな病気?
気分循環症は、軽度の高揚感や活動性の増加(軽躁状態に満たないレベル)と、軽度の気分の落ち込みや意欲の低下(うつ状態に満たないレベル)が、長期間にわたって繰り返し現れる精神疾患です。具体的には、成人では少なくとも2年間(子どもや青年では1年間)にわたり、このような気分の不安定さが続く場合に診断されます。この2年間の中で、症状のない期間が2ヶ月以上続くことはありません。
脳内の神経伝達物質のバランスの乱れが関係していると考えられており、遺伝的要因やストレス、生活リズムの乱れなどが発症に影響すると言われています。これは決して、性格の問題や、努力不足で起こるものではありません。
発症は思春期から青年期にかけて多く見られます。症状が軽いため、ご本人が「自分は気分屋だから」と片付けたり、周囲も「ちょっと変わり者だけど、そういう性格なんだ」と認識したりすることがあり、診断に至るまで時間がかかる傾向があります。しかし、放置すると双極症I型やII型に移行するリスクがあるとも言われています。
どんな症状が現れるの?
気分循環症の症状は、双極症I型やII型のように極端ではありませんが、持続的な気分の不安定さが特徴です。
- 軽度の高揚感・活動性の増加: いわゆる「元気な時期」で、軽躁状態の診断基準を満たすほどではありませんが、以下のような変化が見られます。
- 普段より気分が高揚し、開放的になる。
- 根拠のない自信に満ち溢れ、「何でもできる」と感じる。
- 睡眠時間が短くても平気になり、活動的になる。
- おしゃべりになる、話し方が早口になる。
- アイデアが次々と浮かび、多趣味になる。
- 衝動的に行動する(衝動買いなど)。
- 些細なことでイライラしやすくなる、怒りっぽくなる。
- 軽度の気分の落ち込み・意欲の低下: うつ状態の診断基準を満たすほどではありませんが、以下のような変化が見られます。
- 気分の落ち込みや憂鬱感が続く。
- 以前は楽しめたことにも興味が薄れる。
- 体がだるく、疲れやすい。
- 集中力が続かない。
- 悲観的になり、自分を責める傾向がある。
- 人との交流を避けるようになる。
これらの気分の波は、予測不能に現れたり、一日のうちに何度も変動したりすることもあります。そのため、周囲からは「気まぐれ」「気分屋」「一貫性がない」などと誤解されやすく、人間関係や仕事の継続に困難が生じることがあります。
気分循環症の診断と大切なこと
気分循環症の診断は、専門の医療機関(精神科、心療内科)で行われます。診断には、問診、症状の経過、精神状態の評価などが総合的に用いられます。
- 詳細な問診と症状の確認: ご本人やご家族から、過去2年間以上の気分の波のパターン、それぞれの気分の期間と強度、日常生活への影響などを詳しく聞き取ります。「最も調子の良かった時期」や「最も落ち込んだ時期」の具体的なエピソードを詳しく伝えることが重要です。
- 精神状態の評価: 医師がご本人と面談し、思考、感情、行動の様子を詳しく観察します。
- 他の精神疾患との鑑別: うつ病、双極症I型、II型、パーソナリティ障害など、他の病気と症状が似ている場合があるため、慎重に鑑別が行われます。薬物の影響や他の医学的疾患によるものでないことも確認されます。
大切なのは、気分循環症は軽度の症状が長期間続くため、ご本人が病気と認識しにくい点です。そのため、診断に至るまで時間がかかることが多く、その間に社会生活上の困難が蓄積してしまうことがあります。ご自身の気分の波に「何かおかしいな」と感じたり、周囲から指摘されたりした場合は、早めに専門機関に相談することが重要です。
気分循環症のサポート:症状をコントロールし、安定した生活へ
気分循環症は、適切な治療と支援によって、気分の波をコントロールし、安定した生活を送ることが十分に可能な病気です。支援は、医療的なものだけでなく、心理社会的、社会復帰支援など、多岐にわたります。
1. 薬物療法(必要に応じて)
気分循環症の治療の中心は、薬物療法よりも心理社会的支援や生活習慣の改善が重視されることが多いですが、症状の程度や生活への影響によっては、薬物療法が選択されることもあります。
- 気分安定薬: 気分の波を安定させるために、低用量で気分安定薬が処方されることがあります。双極症への移行リスクを考慮して用いられることもあります。
- 抗うつ薬: 気分循環症では、抗うつ薬のみの使用は気分の不安定さを増す可能性があるため、慎重に判断されます。使用される場合も、気分安定薬と併用されることが一般的です。
医師の指示に従い、決められた量を決められた時間に服用することが非常に大切です。副作用が気になる場合は、自己判断で中断せずに、必ず医師に相談しましょう。
2. 心理社会的支援(精神療法・カウンセリング)
薬物療法と並行して、心理社会的支援は気分循環症の回復に非常に重要です。
- 精神教育: 病気についてご本人やご家族が正しく理解するための情報提供を行います。気分の波が性格の問題ではないこと、病気であること、適切な対処法があることなどを学ぶことで、自己理解を深め、病気への主体的な取り組みを促します。
- 認知行動療法(CBT): 気分の波に伴う思考の偏りや、ストレスへの対処法を学び、症状の悪化を防ぐのに役立ちます。特に、軽度の高揚期に衝動的な行動をとってしまったり、軽度の抑うつ期にネガティブな思考に陥ったりするパターンを認識し、修正していく練習をします。
- 対人関係・社会リズム療法(IPSRT): 生活リズムの乱れが気分の波に影響を与えることに着目し、安定した生活リズムの確立と、人間関係の問題への対処法を学びます。これは気分循環症に特に有効なアプローチとされています。
- 家族への心理教育: ご家族が病気への理解を深め、ご本人への接し方(例えば、高揚期にのめり込みすぎないよう冷静に助言する、落ち込み期に無理強いしないなど)、ご家族自身のストレスケアについて学ぶことができます。家族のサポートは、ご本人の回復にとって非常に大きな力となります。
3. 生活習慣の改善
規則正しい生活リズムを維持することは、気分の波を安定させる上で非常に重要です。
- 十分な睡眠: 睡眠不足や不規則な睡眠は気分の不安定さを増幅させるため、規則正しい時間に十分な睡眠をとることが大切です。
- 規則正しい食事: バランスの取れた食事を規則的に摂ることも、体調管理に繋がります。
- 適度な運動: 適度な運動は、気分の安定やストレス軽減に役立ちますが、過度な活動は高揚感を招く可能性もあるため、自分に合った運動量を見つけることが重要です。
- ストレス管理: ストレスを上手に管理する方法(リラクゼーション、趣味、休息など)を身につけることが、症状の悪化や再発予防に繋がります。
4. 社会復帰支援と生活の場へのサポート
症状が安定してくると、社会生活への参加を促す支援も重要になります。
- デイケア・作業療法: 医療機関や福祉施設で行われるプログラムで、規則正しい生活リズムの獲得、作業活動を通じた集中力の向上、人との交流、社会参加への準備などを行います。
- 就労支援: ハローワークの障害者専門援助部門、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所など、病気の特性を理解した上で、仕事を見つけ、職場で長く働き続けられるようサポートする機関があります。気分の波に対応できる働き方や、ストレスの少ない職場環境を探すお手伝いも可能です。高崎市にも、ハローワーク高崎や群馬県発達障害者支援センターなど、様々な支援機関がありますね。
- ピアサポート: 同じ病気を経験した仲間(ピアサポーター)との交流を通して、体験を分かち合い、支え合う活動です。孤独感を軽減し、回復への希望を持つことにつながります。
5. 再発予防と早期発見
気分循環症は、症状が改善しても再発する可能性が高い病気です。再発を防ぐためには、継続的な治療と、ご本人や周囲が再発のサインを早期に察知することが重要です。
- 気分安定ノート/アプリ: 自分の気分の変化、睡眠時間、活動量、服薬状況などを記録することで、気分の波のパターンや再発のサインに気づきやすくなります。
- 再発サインの把握: 医師や家族と共に、自分にとっての高揚感や落ち込みの初期サイン(例:不眠、イライラ、多弁、食欲の変化、衝動的な行動など)を把握しておくことが大切です。
- 定期的な受診: 症状が安定していても、定期的に医療機関を受診し、医師と相談しながら治療を続けることが再発予防につながります。
まとめ:気分の波はあなたのせいじゃない。適切な支援で、穏やかな日常へ
気分循環症は、その軽さゆえに「個性」として見過ごされがちですが、放置すると生活の質を大きく低下させ、他の精神疾患へ移行する可能性もあります。しかし、この「見えにくい」気分の波に気づき、正しい診断と適切な治療、そして生活習慣の工夫を行うことで、症状をコントロールし、安定した日常生活を送ることが十分に可能です。
重要なのは、病気を恐れずに正しい知識を持ち、一人で抱え込まずに、専門家や支援機関に頼ることです。
もし、ご自身やご家族、身近な方で気分循環症の症状に心当たりのある方がいる場合は、早めに精神科や心療内科を受診することをお勧めします。早期の診断と介入が、回復への道を開く鍵となります。
気分の波は、あなたの個性の一部ではありません。それは乗り越えられる病気です。希望を持って、自分らしい安定した生活を目指しましょう。
「独特な世界観」を持つあなたへ:自閉スペクトラム症の理解とサポート
「人と関わるのが少し苦手…」「特定のことに強いこだわりがある…」「予定が変わるとパニックになってしまう…」。
日常生活の中で、このように感じたことはありませんか? もしかしたら、それは**自閉スペクトラム症(ASD)と呼ばれる発達特性によるものかもしれません。自閉スペクトラム症は、かつて「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」といった名称で呼ばれていましたが、現在は、それぞれの特性が連続しているという考え方から、「自閉スペクトラム症」**という一つの名称にまとめられています。
これは、単に言葉の置き換えではなく、一人ひとりの特性がグラデーションのように多様であることを示しており、画一的な「障害」として捉えるのではなく、その人の持つ「特性」として理解しようとする視点への変化でもあります。
この記事では、自閉スペクトラム症とは具体的にどのような特性を持つのか、どのように診断され、そして何よりも、ご本人やご家族がどのようなサポートを受けられるのかについて、分かりやすく解説していきます。正しい理解と適切なサポートが、自閉スペクトラム症のある方が「自分らしく」社会で輝くための第一歩となるでしょう。
自閉スペクトラム症って、どんな特性があるの?
自閉スペクトラム症の主な特性は、大きく分けて以下の2つの領域に現れます。これらの特性は、乳幼児期から見られることが特徴です。
- 対人関係とコミュニケーションの困難:
- 非言語的コミュニケーションの困難: 表情、アイコンタクト、身振り手振りなどの非言語的なサインを読み取ったり、適切に使ったりすることが苦手な場合があります。相手の意図が理解しにくかったり、自分の気持ちがうまく伝わらなかったりすることがあります。
- 相互的なやりとりの困難: 会話のキャッチボールが苦手で、一方的に話し続けたり、相手の関心に合わせることが難しかったりします。グループでの活動や遊びに加わることに困難を感じることもあります。
- 関係性の構築・維持の困難: 友人関係を築いたり、維持したりすることが苦手な場合があります。これは、関わりたい気持ちがあっても、どうすれば良いか分からない、相手の気持ちが読めないといった理由によるものです。
- 限定された興味・行動、反復行動:
- 特定のものへの強いこだわり: 特定の物事(例えば、電車、恐竜、特定の分野の知識など)に非常に強い興味を持ち、それ以外のことにほとんど関心を示さないことがあります。その分野については驚くほど詳しい知識を持つこともあります。
- 反復的な行動や動作: 体を揺らす、手をひらひらさせる(常同行動)、同じ言葉を繰り返す(エコラリア)など、反復的な動作や行動が見られることがあります。
- ルーティンへの強いこだわり: 決まった手順や習慣に強くこだわり、それが崩れると強い不安を感じたり、パニックになったりすることがあります。日々の生活の中で、予期せぬ変化に非常に弱い場合があります。
- 感覚の過敏さ・鈍感さ: 特定の音や光、匂い、肌触りに対して、非常に敏感で苦痛を感じたり(過敏)、逆に痛みや温度に気づきにくかったり(鈍感)することがあります。
これらの特性は、一人ひとり全く異なり、組み合わさることで非常に多様な姿として現れます。そのため、「スペクトラム(連続体)」という言葉が使われるのです。
自閉スペクトラム症の診断と大切なこと
自閉スペクトラム症の診断は、専門の医療機関(児童精神科、発達専門医など)で行われます。診断には、以下のような様々な情報が用いられます。
- 発達歴の確認: 幼少期からのコミュニケーションや対人関係、興味・行動の様子について、保護者やご本人からの聞き取りを詳細に行います。
- 行動観察: 実際のコミュニケーション場面や遊びの様子を観察し、特性を評価します。
- 心理検査: 知的な発達の状況や、特性に関する質問紙などを用いて、多角的に評価します。
- 他の疾患との鑑別: 知的発達症やADHDなど、他の発達特性や精神疾患と併存している可能性もあるため、総合的に判断します。
大切なのは、診断はあくまで「その人の特性を理解し、適切な支援に繋げるためのもの」であるということです。診断名がつくことで、その人に合った教育的配慮や福祉サービス、そして社会的なサポートを利用できるようになり、より暮らしやすくなるための道が開けます。
自閉スペクトラム症のある方へのサポート:多様な才能を伸ばすために
自閉スペクトラム症自体を「治す」治療法はありません。しかし、その特性を理解し、適切な時期に適切な支援を受けることで、コミュニケーションスキルを向上させ、社会生活における困難を軽減し、その人ならではの強みや才能を伸ばすことが十分に可能です。支援は、子どもの成長段階や大人のライフステージに応じて多岐にわたります。
1. 早期発見と早期介入
乳幼児期に自閉スペクトラム症の特性が気になる場合、できるだけ早く専門機関に相談することが大切です。早期に介入することで、コミュニケーション能力の基盤を築き、その後の学習や社会生活に大きな良い影響を与えると言われています。 具体的には、行動療法(ABA)、ソーシャルスキルトレーニング(SST)、構造化された環境での学びなどが早期からの支援の中心となります。
2. 教育現場でのサポート
- 個別最適化された指導: 通常学級での個別支援、通級指導教室、特別支援学級、特別支援学校など、子どもの特性や学習スタイルに合わせた教育環境が提供されます。
- 「分かりやすい」環境作り:
- 構造化された環境: 視覚的なスケジュール(絵や写真で一日の流れを示す)、整理整頓された環境、明確なルール設定など、予測可能な環境を整えることで、不安を軽減し、主体的な行動を促します。
- 視覚的な情報提示: 言葉だけでなく、絵カード、写真、文字など、視覚的な情報を用いて指示を出したり、物事を説明したりすることで、理解を深めます。
- 明確な指示: 曖昧な指示は避け、具体的に、一つずつ指示を出すようにします。
- ソーシャルスキルトレーニング (SST): 友だちとの関わり方、相手の気持ちの察し方、困ったときの伝え方など、社会的な状況での適切なコミュニケーション方法を、ロールプレイングなどを通して練習します。
3. 日常生活と社会参加への支援
- コミュニケーション支援: コミュニケーションボードの使用、ITツール(コミュニケーションアプリなど)の活用、筆談など、その人に合ったコミュニケーション方法を見つけ、日常でのやり取りをスムーズにします。
- 感覚過敏への配慮: 光、音、匂い、触覚など、感覚の過敏さに対する配慮(耳栓、サングラス、刺激の少ない衣類など)を行うことで、不必要なストレスを軽減し、落ち着いて過ごせる環境を整えます。
- 就労支援: 成人期には、ハローワークの障害者専門窓口や、就労移行支援事業所など、自閉スペクトラム症の特性を理解した上で、その人の強みを活かせる仕事を見つけ、職場で長く働き続けられるようサポートする機関があります。高崎市にも、ハローワーク高崎や群馬県発達障害者支援センターなど、様々な支援機関がありますね。職場での人間関係や業務遂行を円滑にするための具体的なアドバイスも受けられます。
- 地域での暮らしのサポート: 障害者手帳の取得(これにより様々な福祉サービスが受けられます)、グループホームや居宅介護といった障害福祉サービスの利用、困った時に相談できる「相談支援事業所」の活用など、地域で安心して生活し、社会参加を促すためのサービスがあります。
- ご家族への支援: 家族が自閉スペクトラム症への理解を深め、適切な関わり方を学ぶためのペアレントトレーニングや、情報交換会なども重要なサポートです。
4. 合併症・二次障害への対応
自閉スペクトラム症のある方は、注意欠如・多動症(ADHD)や知的発達症、限局性学習症(学習障害)などの他の神経発達症を併せ持つことがあります。また、コミュニケーションの困難や環境への適応の難しさから、不安症、抑うつ、不登校、引きこもりなどの「二次障害」を抱えるリスクもあります。
これらの問題に対しては、早期に気づき、専門の医療機関と連携して適切な治療やカウンセリングを行うことが重要です。オンラインカウンセリングも、二次障害による不安や抑うつへのケアとして有効な手段となり得ます。
まとめ:多様性を認め、一人ひとりの可能性を拓く社会へ
自閉スペクトラム症は、病気ではなく、その人の脳の特性であり、その人らしさを形作る大切な要素です。彼らが持つ独特な視点や、特定の分野への深い集中力、真面目さ、優れた記憶力などは、社会にとってかけがえのない強みとなることがあります。
大切なのは、その特性を理解し、その人に合った環境を整え、必要なサポートを提供することです。画一的な「普通」に当てはめるのではなく、一人ひとりの多様性を認め、それぞれが持つ可能性を最大限に引き出す社会を目指すことが重要ですす。
もし、ご自身やご家族、身近な方で自閉スペクトラム症の可能性を感じたり、何か困りごとを抱えていたりする場合は、一人で抱え込まずに、ぜひ専門家へ相談してください。地域の保健センター、子ども家庭支援センター、児童相談所、発達障害者支援センターなど、様々な相談窓口があります。
あなたの「独特な世界観」を大切にし、自分らしく輝くために、今、できることから始めてみませんか?
いつも「どんより」していませんか?「持続性抑うつ症」の理解と、穏やかな日常へのヒント
「もう何年も、ずっと気分が沈んだままだ」「楽しいと感じることがほとんどない」「いつも体が重くて、なかなかやる気が出ない」。
もし、あなた自身や大切な人が、このように軽度ながらも長期間にわたる気分の落ち込みや意欲の低下に悩まされているとしたら、それは**持続性抑うつ症(Persistent Depressive Disorder)**のサインかもしれません。以前は「気分変調症(Dysthymia)」と呼ばれていましたが、大うつ病ほど症状は重くないものの、その状態が2年以上(子どもや青年では1年以上)にわたって続くことが特徴です。
持続性抑うつ症は、症状が軽いため「自分の性格だ」「こんなものだ」と見過ごされやすく、適切な診断や治療にたどり着くまでに時間がかかることがあります。しかし、この慢性的な心の不調は、日常生活、学業、仕事、人間関係にじわじわと影響を及ぼし、生きづらさや苦痛につながることが少なくありません。
この記事では、持続性抑うつ症が具体的にどのような病気なのか、どんな症状が現れるのか、そして何よりも、ご本人やご家族が穏やかな生活を送るためのどのようなサポートを受けられるのかについて、分かりやすく解説していきます。正しい理解と適切なサポートが、この「見えにくい」心の不調と向き合い、自分らしい日常を取り戻すための第一歩となるでしょう。
持続性抑うつ症って、どんな病気?
持続性抑うつ症は、軽度ながらも慢性的に気分の落ち込みが続く精神疾患です。大うつ病性障害のように症状が非常に重くなることは少ないですが、その状態が成人では少なくとも2年間、子どもや青年では少なくとも1年間にわたってほとんど毎日続き、症状のない期間が2ヶ月以上続くことがないのが特徴です。
脳内の神経伝達物質のバランスの乱れや、ストレス、遺伝的要因、性格傾向などが複雑に絡み合って発症すると考えられています。決して、性格の弱さや努力不足が原因で起こるものではありません。
発症は比較的若い時期に始まることが多く、症状が長期間続くことで、ご本人が「これが自分の普通の状態」と感じてしまい、医療機関への受診をためらうケースがよく見られます。
どんな症状が現れるの?
持続性抑うつ症の症状は、大うつ病ほど顕著ではないものの、以下のうち少なくとも2つ以上が慢性的に現れます。
- 気分の落ち込み:
- 毎日ほとんど終日、気分が沈んだり、悲しい気持ちになったりします。
- 「どんよりとした気分」「気分が晴れない」という状態が慢性的に続きます。
- 食欲の変化:
- 食欲不振で食欲が湧かない、あるいは逆に食べ過ぎてしまうことがあります。
- 睡眠障害:
- 寝つきが悪くなる不眠、夜中に目が覚める、朝早く目が覚めてしまう、あるいは過眠(寝過ぎてしまう)などの問題が見られます。
- 疲労感・倦怠感:
- 体がだるく、常に疲れている感覚があり、休息をとっても回復しないことが多いです。
- 自己肯定感の低下:
- 自分に自信が持てない、自分が価値のない人間だと感じてしまうことがあります。
- 集中力・思考力の低下:
- 物事を考えたり、集中したりすることが難しくなります。仕事や勉強の効率が落ちる、忘れっぽくなるなどの形で現れます。
- 絶望感:
- 将来に希望が持てず、悲観的に考える傾向があります。
これらの症状が長期間続くことで、ご本人は社会生活や人間関係に困難を感じたり、「生きづらさ」を抱えたりすることが多くなります。また、大うつ病性障害を併発する「二重うつ病」になるリスクもあります。
持続性抑うつ症の診断と大切なこと
持続性抑うつ症の診断は、専門の医療機関(精神科、心療内科)で行われます。診断には、問診、症状の経過、精神状態の評価などが総合的に用いられます。
- 詳細な問診と症状の確認: ご本人やご家族から、いつからどのような症状が見られるようになったか、それぞれの症状の強さ、日常生活にどのような影響が出ているかなどを詳しく聞き取ります。特に、症状が2年以上続いていること、症状のない期間が2ヶ月以上ないことが診断の重要なポイントとなります。
- 精神状態の評価: 医師がご本人と面談し、思考、感情、行動の様子を詳しく観察します。
- 身体診察・検査: 症状が他の病気(甲状腺機能障害、貧血など)や薬物の影響によるものでないかを確認するため、血液検査などが行われることもあります。
- 他の精神疾患との鑑別: 大うつ病性障害、双極症、パーソナリティ障害など、他の精神疾患の可能性がないかを確認することも重要です。
大切なのは、持続性抑うつ症は症状が軽度で慢性的なため、ご本人が「自分の性格」や「怠け」と誤解してしまい、なかなか受診に繋がらないことが多い点です。しかし、適切な診断と治療を受けることで、症状が改善し、生活の質を向上させることが可能です。「もしかして?」と感じたら、専門機関に相談することが回復への第一歩となります。
持続性抑うつ症のサポート:穏やかな日常を取り戻すために
持続性抑うつ症は、適切な治療と支援によって、症状をコントロールし、より安定した生活を送ることが十分に可能な病気です。支援は、医療的なものだけでなく、心理社会的、社会復帰支援など、多岐にわたります。
1. 精神療法・カウンセリング
持続性抑うつ症の治療の中心は、**精神療法(カウンセリング)**であることが多いです。薬物療法と併用されることもあります。
- 認知行動療法(CBT): 持続的な落ち込みを維持する思考のパターンや、行動の偏りを見つけ、修正していく方法を学びます。自己肯定感の向上や、ストレスへの対処法、問題解決能力の向上にも繋がります。
- 対人関係療法(IPT): 対人関係のストレスが症状に影響している場合に、人間関係のパターンを改善し、コミュニケーション能力を高めることを目指します。
- 精神教育: 病気についてご本人やご家族が正しく理解するための情報提供を行います。病気のメカニズム、症状、治療法、再発予防策などを学ぶことで、病気への理解が深まり、治療への主体的な参加を促します。
- 問題解決療法: 日常生活で抱える具体的な問題に焦点を当て、解決策を一緒に考えることで、自信を取り戻し、症状の軽減を目指します。
2. 薬物療法(必要に応じて)
精神療法が主な治療法ですが、症状の程度や精神療法の効果によっては、薬物療法が選択されることもあります。
- 抗うつ薬: 気分の落ち込みや意欲の低下などの症状を改善するために処方されることがあります。
- 気分安定薬: 双極症への移行リスクがある場合や、気分の不安定さが目立つ場合に検討されることもあります。
医師の指示に従い、決められた量を決められた時間に服用することが非常に大切です。副作用が気になる場合は、自己判断で中断せずに、必ず医師に相談しましょう。
3. 生活習慣の改善
規則正しい生活リズムと健康的な生活習慣は、持続性抑うつ症の症状を和らげ、再発予防に非常に重要です。
- 規則正しい睡眠: 寝る時間と起きる時間を一定に保ち、質の良い睡眠を心がけましょう。
- バランスの取れた食事: 栄養バランスの取れた食事を規則的に摂りましょう。
- 適度な運動: 体調に合わせて、散歩や軽い体操など、無理のない範囲で体を動かすことは、気分の改善やストレス軽減に繋がります。
- ストレス管理: ストレスの原因を特定し、リラクゼーション法(深呼吸、瞑想など)や趣味、休息などでストレスを上手に管理する方法を身につけましょう。
4. 周囲のサポートと社会復帰支援
ご家族や周囲の理解とサポートは、持続性抑うつ症の回復にとって大きな力となります。
- ご家族への支援: 家族会や相談会などを通じて、病気への理解を深め、ご本人への接し方(無理に励まさない、ゆっくり話を聞いてあげるなど)、ご家族自身のストレスケアについて学ぶことができます。
- 就労支援: 症状が安定し、社会復帰を目指す段階では、ハローワークの障害者専門援助部門や、就労移行支援事業所など、病気の特性を理解した上で、仕事を見つけ、職場で長く働き続けられるようサポートする機関があります。高崎市にも、ハローワーク高崎や群馬県発達障害者支援センターなど、様々な支援機関がありますね。(2025年7月現在)
- デイケア・作業療法: 規則正しい生活リズムの獲得、作業活動を通じた集中力の向上、人との交流、社会参加への準備などを行います。
5. 再発予防と早期発見
持続性抑うつ症は、症状が改善しても再発する可能性のある病気です。再発を防ぐためには、継続的な治療と、ご本人や周囲が症状の変化を早期に察知することが重要です。
- 症状の日記: 自分の体調や精神状態の変化(特に気分の落ち込み、睡眠、食欲の変化など)を記録することで、症状の悪化のサインに気づきやすくなります。
- 定期的な受診: 症状が安定していても、自己判断で治療を中断せず、定期的に医療機関を受診し、医師と相談しながら治療を続けることが再発予防につながります。
まとめ:慢性的な不調は「性格」ではなく「病気」です。一歩踏み出して、穏やかな日常へ
持続性抑うつ症は、その症状の軽さと慢性さゆえに、本人が病気と気づきにくい「見えにくい心の不調」です。しかし、この状態を放置すると、日常生活の質が低下したり、より重い精神疾患へと移行したりするリスクがあります。
重要なのは、気分の不調を「自分の性格だから」と諦めず、これは適切な支援で改善できる「病気」であると認識することです。一人で抱え込まずに、専門家や支援機関に頼ることで、症状をコントロールし、自分らしい穏やかな生活を送ることが十分に可能です。
もし、ご自身やご家族、身近な方で持続性抑うつ症の症状に心当たりのある方がいる場合は、早めに精神科や心療内科を受診することをお勧めします。早期の診断と介入が、回復への道を開く鍵となります。
慢性的な心の不調を抱えているあなたは、一人ではありません。多くの支援者が、あなたの回復を心から応援し、サポートするためにここにいます。希望を持って、穏やかな日常への一歩を踏み出しましょう。
気分の「ハイ」と「ロー」に翻弄されていませんか?双極症I型(躁うつ病)の理解とサポート
「数日間、眠らなくても平気で、次々にアイデアが浮かび、何でもできるような気がしたと思ったら、次の瞬間には何も手につかないほどの絶望感に襲われる」。
もし、あなた自身や大切な人が、このように極端な気分の波に苦しんでいるとしたら、それは双極症I型と呼ばれる精神疾患の症状かもしれません。かつて「躁うつ病」と呼ばれていたこの病気は、激しい躁(そう)状態と、抑うつ状態(うつ状態)を繰り返すことが特徴です。
この気分の波は、その人の意思でコントロールできるものではなく、日常生活、学業、仕事、人間関係に大きな影響を及ぼします。しかし、双極症I型は、適切な治療と支援によって、症状をコントロールし、安定した生活を送ることが十分に可能な病気です。
この記事では、双極症I型が具体的にどのような病気なのか、どんな症状が現れるのか、そして何よりも、ご本人やご家族がどのようなサポートを受けられるのかについて、分かりやすく解説していきます。正しい理解と適切なサポートが、気分の波を乗り越え、自分らしい人生を歩むための第一歩となるでしょう。
双極症I型って、どんな病気?
双極症I型は、**「躁(そう)状態」と「抑うつ状態(うつ状態)」**という、対照的な二つの極端な気分エピソードを繰り返す精神疾患です。この気分の波が、あたかもジェットコースターのように、生活を大きく揺さぶる特徴があります。
脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)のバランスの乱れが関係していると考えられており、遺伝的要因やストレス、生活リズムの乱れなどが発症に影響すると言われています。決して、性格の問題や、努力不足で発症するものではありません。
発症は10代後半から20代にかけて多く見られますが、診断に至るまで時間がかかることも少なくありません。これは、最初に抑うつ状態を経験し、うつ病と誤診されるケースがあるためです。
どんな症状が現れるの?
双極症I型の症状は、主に以下の二つの極端な気分エピソードとして現れます。
- 躁状態(そうじょうたい): 少なくとも1週間以上続き、日常生活に著しい支障をきたす、極端に気分が高揚した状態です。
- 気分の高揚・開放感: 理由もなく気分が非常に高揚し、開放的で自信にあふれているように感じます。
- 活動性の増加: 眠らなくても平気でいられる、次々と新しいことを始めようとする、じっとしていられないなど、活動量が著しく増えます。
- 多弁: 早口になり、次から次へと話題が変わり、話し続ける傾向があります。
- 思考の加速(観念奔逸): 頭の中で考えが次々と浮かび、まとまらないことがあります。
- 注意散漫: 集中力が低下し、一つのことに長く注意を向けるのが難しくなります。
- 衝動的な行動: 普段ならしないような無謀な投資、浪費、ギャンブル、性的な逸脱行為など、後先を考えない行動に走ることがあります。
- 誇大妄想: 自分には特別な能力がある、偉大な人間であるといった、現実離れした自信や妄想を抱くことがあります。
- 易刺激性: 些細なことでイライラしやすくなったり、怒りっぽくなったりすることもあります。
- 精神病症状: 重度の躁状態では、幻覚や妄想を伴うこともあります。
- 抑うつ状態(うつじょうたい): 少なくとも2週間以上続き、日常生活に著しい支障をきたす、気分の落ち込みが強い状態です。うつ病の症状と基本的に同じです。
- 気分の落ち込み・憂鬱感: 何をしていても気分が晴れず、常に憂鬱な状態が続きます。
- 興味や喜びの喪失: 以前は楽しめたことにも関心がなくなり、喜びを感じられなくなります。
- 食欲や睡眠の変化: 食欲不振や過食、不眠や過眠など、食欲や睡眠のパターンに変化が見られます。
- 倦怠感・疲労感: 体がだるく、何もする気力が湧かず、極度の疲労感を感じます。
- 思考力・集中力の低下: 物事を考えたり、集中したりすることが難しくなります。
- 無価値感・罪悪感: 自分を責めたり、価値のない人間だと感じたりすることがあります。
- 希死念慮: 「死んでしまいたい」と考えることがあります。
双極症I型では、特に躁状態の激しさが特徴で、日常生活や社会生活に大きな影響を及ぼし、入院が必要になるケースも少なくありません。
双極症I型の診断と大切なこと
双極症I型の診断は、専門の医療機関(精神科、心療内科)で行われます。診断には、問診、症状の経過、精神状態の評価などが総合的に用いられます。
- 詳細な問診と症状の確認: ご本人やご家族から、気分の波の有無とパターン、それぞれの気分エピソードの期間や強度、日常生活への影響などを詳しく聞き取ります。特に躁状態のエピソードが過去にあったかどうかが重要です。
- 精神状態の評価: 医師がご本人と面談し、思考、感情、行動の様子を詳しく観察します。
- 身体診察・検査: 症状が他の病気(甲状腺機能障害や薬物の影響など)によるものでないかを確認するため、血液検査などが行われることもあります。
大切なのは、双極症I型は症状が複雑で、特に最初に抑うつ状態だけで受診した場合、うつ病と誤診されることがある点です。過去の躁状態のエピソードを正確に医師に伝えることが、適切な診断に繋がります。ご家族からの客観的な情報も、診断の重要な手がかりとなります。
双極症I型のサポート:症状をコントロールし、安定した生活へ
双極症I型は、適切な治療と支援によって、症状をコントロールし、安定した生活を送ることが十分に可能な病気です。支援は、医療的なものだけでなく、心理社会的、社会復帰支援など、多岐にわたります。
1. 薬物療法
双極症I型の治療の中心は、薬物療法です。気分の波を安定させることが重要であるため、主に以下の薬が用いられます。
- 気分安定薬: 躁状態とうつ状態、両方の気分変動を抑える働きがあります。リチウム、バルプロ酸、ラモトリギンなどが代表的です。
- 非定型抗精神病薬: 躁状態の症状を抑えるために用いられることがあります。一部のものは、うつ状態や気分の安定にも効果を発揮します。
- 抗うつ薬: うつ状態が強い場合に処方されることがありますが、単独での使用は躁転(うつ状態から躁状態へ転じること)のリスクを高める可能性があるため、気分安定薬と併用されることが一般的です。
医師の指示に従い、決められた量を決められた時間に服用することが非常に大切です。症状が落ち着いてからも、再発を防ぐために服薬を続ける「維持療法」が必要となります。副作用が気になる場合は、自己判断で中断せずに、必ず医師に相談しましょう。
2. 心理社会的支援(精神療法・カウンセリング)
薬物療法と並行して、心理社会的支援も回復に欠かせません。
- 精神教育: 病気についてご本人やご家族が正しく理解するための情報提供を行います。病気のメカニズム、症状、治療法、再発予防策などを学ぶことで、病気への理解が深まり、治療への主体的な参加を促します。
- 認知行動療法(CBT): 気分の波に伴う思考の偏りや、ストレスへの対処法を学び、症状の悪化を防ぐのに役立ちます。
- 対人関係・社会リズム療法(IPSRT): 生活リズムの乱れが気分の波に影響を与えることに着目し、安定した生活リズムの確立と、人間関係の問題への対処法を学びます。
- 家族への心理教育: ご家族が病気への理解を深め、ご本人への接し方(例えば、躁状態の時に不用意に刺激しないなど)、ご家族自身のストレスケアについて学ぶことができます。家族のサポートは、ご本人の回復にとって非常に大きな力となります。
3. 生活習慣の改善
規則正しい生活リズムを維持することは、気分の波を安定させる上で非常に重要です。
- 十分な睡眠: 睡眠不足は躁転の引き金となることがあるため、規則正しい時間に十分な睡眠をとることが大切です。
- 規則正しい食事: バランスの取れた食事を規則的に摂ることも、体調管理に繋がります。
- 適度な運動: 適度な運動は、気分の安定やストレス軽減に役立ちますが、過度な運動は躁状態を悪化させる可能性もあるため、医師と相談しながら行いましょう。
- ストレス管理: ストレスを上手に管理する方法(リラクゼーション、趣味、休息など)を身につけることが、症状の悪化や再発予防に繋がります。
4. 社会復帰支援と生活の場へのサポート
症状が安定してくると、社会復帰や自立した生活を目指すための支援が重要になります。
- デイケア・作業療法: 医療機関や福祉施設で行われるプログラムで、規則正しい生活リズムの獲得、作業活動を通じた集中力の向上、人との交流、社会参加への準備などを行います。
- 就労支援: ハローワークの専門援助部門、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所など、病気の特性を理解した上で、仕事を見つけ、職場で長く働き続けられるようサポートする機関があります。高崎市にも、ハローワーク高崎や群馬県発達障害者支援センターなど、様々な支援機関がありますね。
- ピアサポート: 同じ病気を経験した仲間(ピアサポーター)との交流を通して、体験を分かち合い、支え合う活動です。孤独感を軽減し、回復への希望を持つことにつながります。
5. 再発予防と早期発見
双極症I型は、症状が改善しても再発する可能性が高い病気です。再発を防ぐためには、継続的な治療と、ご本人や周囲が再発のサインを早期に察知することが重要です。
- 気分安定ノート/アプリ: 自分の気分の変化、睡眠時間、活動量、服薬状況などを記録することで、気分の波のパターンや再発のサインに気づきやすくなります。
- 再発サインの把握: 医師や家族と共に、自分にとっての躁状態やうつ状態の初期サイン(例:不眠、イライラ、多弁、食欲の変化など)を把握しておくことが大切です。
- 定期的な受診: 症状が安定していても、定期的に医療機関を受診し、医師と相談しながら治療を続けることが再発予防につながります。
まとめ:気分の波は乗り越えられる。希望を持って、自分らしい人生を
双極症I型は、激しい気分の波によって本人や周囲を苦しめる病気ですが、適切な治療と継続的な支援があれば、症状をコントロールし、自分らしい生活を送ることが十分に可能です。気分の波に翻弄されることなく、安定した日々を送ることは夢ではありません。
重要なのは、病気を恐れずに正しい知識を持ち、一人で抱え込まずに、専門家や支援機関に頼ることです。
もし、ご自身やご家族、身近な方で双極症I型の症状に心当たりのある方がいる場合は、早めに精神科や心療内科を受診することをお勧めします。早期の診断と介入が、回復への道を開く鍵となります。
病気と共に生きる中で、様々な困難に直面することもあるかもしれません。しかし、あなた一人ではありません。多くの支援者が、あなたの回復を心から応援し、サポートするためにここにいます。希望を持って、回復への一歩を踏み出しましょう。