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2025-07-27 15:03:00

いつも「どんより」していませんか?「持続性抑うつ症」の理解と、穏やかな日常へのヒント

「もう何年も、ずっと気分が沈んだままだ」「楽しいと感じることがほとんどない」「いつも体が重くて、なかなかやる気が出ない」。

もし、あなた自身や大切な人が、このように軽度ながらも長期間にわたる気分の落ち込みや意欲の低下に悩まされているとしたら、それは**持続性抑うつ症(Persistent Depressive Disorder**のサインかもしれません。以前は「気分変調症(Dysthymia)」と呼ばれていましたが、大うつ病ほど症状は重くないものの、その状態が2年以上(子どもや青年では1年以上)にわたって続くことが特徴です。

持続性抑うつ症は、症状が軽いため「自分の性格だ」「こんなものだ」と見過ごされやすく、適切な診断や治療にたどり着くまでに時間がかかることがあります。しかし、この慢性的な心の不調は、日常生活、学業、仕事、人間関係にじわじわと影響を及ぼし、生きづらさや苦痛につながることが少なくありません。

この記事では、持続性抑うつ症が具体的にどのような病気なのか、どんな症状が現れるのか、そして何よりも、ご本人やご家族が穏やかな生活を送るためのどのようなサポートを受けられるのかについて、分かりやすく解説していきます。正しい理解と適切なサポートが、この「見えにくい」心の不調と向き合い、自分らしい日常を取り戻すための第一歩となるでしょう。

持続性抑うつ症って、どんな病気?

持続性抑うつ症は、軽度ながらも慢性的に気分の落ち込みが続く精神疾患です。大うつ病性障害のように症状が非常に重くなることは少ないですが、その状態が成人では少なくとも2年間、子どもや青年では少なくとも1年間にわたってほとんど毎日続き、症状のない期間が2ヶ月以上続くことがないのが特徴です。

脳内の神経伝達物質のバランスの乱れや、ストレス、遺伝的要因、性格傾向などが複雑に絡み合って発症すると考えられています。決して、性格の弱さや努力不足が原因で起こるものではありません。

発症は比較的若い時期に始まることが多く、症状が長期間続くことで、ご本人が「これが自分の普通の状態」と感じてしまい、医療機関への受診をためらうケースがよく見られます。

どんな症状が現れるの?

持続性抑うつ症の症状は、大うつ病ほど顕著ではないものの、以下のうち少なくとも2つ以上が慢性的に現れます。

  1. 気分の落ち込み:
    • 毎日ほとんど終日、気分が沈んだり、悲しい気持ちになったりします。
    • 「どんよりとした気分」「気分が晴れない」という状態が慢性的に続きます。
  2. 食欲の変化:
    • 食欲不振で食欲が湧かない、あるいは逆に食べ過ぎてしまうことがあります。
  3. 睡眠障害:
    • 寝つきが悪くなる不眠、夜中に目が覚める、朝早く目が覚めてしまう、あるいは過眠(寝過ぎてしまう)などの問題が見られます。
  4. 疲労感・倦怠感:
    • 体がだるく、常に疲れている感覚があり、休息をとっても回復しないことが多いです。
  5. 自己肯定感の低下:
    • 自分に自信が持てない、自分が価値のない人間だと感じてしまうことがあります。
  6. 集中力・思考力の低下:
    • 物事を考えたり、集中したりすることが難しくなります。仕事や勉強の効率が落ちる、忘れっぽくなるなどの形で現れます。
  7. 絶望感:
    • 将来に希望が持てず、悲観的に考える傾向があります。

これらの症状が長期間続くことで、ご本人は社会生活や人間関係に困難を感じたり、「生きづらさ」を抱えたりすることが多くなります。また、大うつ病性障害を併発する「二重うつ病」になるリスクもあります。

持続性抑うつ症の診断と大切なこと

持続性抑うつ症の診断は、専門の医療機関(精神科、心療内科)で行われます。診断には、問診、症状の経過、精神状態の評価などが総合的に用いられます。

  • 詳細な問診と症状の確認ご本人やご家族から、いつからどのような症状が見られるようになったか、それぞれの症状の強さ、日常生活にどのような影響が出ているかなどを詳しく聞き取ります。特に、症状が2年以上続いていること、症状のない期間が2ヶ月以上ないことが診断の重要なポイントとなります。
  • 精神状態の評価医師がご本人と面談し、思考、感情、行動の様子を詳しく観察します。
  • 身体診察・検査症状が他の病気(甲状腺機能障害、貧血など)や薬物の影響によるものでないかを確認するため、血液検査などが行われることもあります。
  • 他の精神疾患との鑑別大うつ病性障害、双極症、パーソナリティ障害など、他の精神疾患の可能性がないかを確認することも重要です。

大切なのは、持続性抑うつ症は症状が軽度で慢性的なため、ご本人が「自分の性格」や「怠け」と誤解してしまい、なかなか受診に繋がらないことが多い点です。しかし、適切な診断と治療を受けることで、症状が改善し、生活の質を向上させることが可能です。「もしかして?」と感じたら、専門機関に相談することが回復への第一歩となります。

持続性抑うつ症のサポート:穏やかな日常を取り戻すために

持続性抑うつ症は、適切な治療と支援によって、症状をコントロールし、より安定した生活を送ることが十分に可能な病気です。支援は、医療的なものだけでなく、心理社会的、社会復帰支援など、多岐にわたります。

1. 精神療法・カウンセリング

持続性抑うつ症の治療の中心は、**精神療法(カウンセリング)**であることが多いです。薬物療法と併用されることもあります。

  • 認知行動療法(CBT持続的な落ち込みを維持する思考のパターンや、行動の偏りを見つけ、修正していく方法を学びます。自己肯定感の向上や、ストレスへの対処法、問題解決能力の向上にも繋がります。
  • 対人関係療法(IPT対人関係のストレスが症状に影響している場合に、人間関係のパターンを改善し、コミュニケーション能力を高めることを目指します。
  • 精神教育病気についてご本人やご家族が正しく理解するための情報提供を行います。病気のメカニズム、症状、治療法、再発予防策などを学ぶことで、病気への理解が深まり、治療への主体的な参加を促します。
  • 問題解決療法日常生活で抱える具体的な問題に焦点を当て、解決策を一緒に考えることで、自信を取り戻し、症状の軽減を目指します。

2. 薬物療法(必要に応じて)

精神療法が主な治療法ですが、症状の程度や精神療法の効果によっては、薬物療法が選択されることもあります。

  • 抗うつ薬気分の落ち込みや意欲の低下などの症状を改善するために処方されることがあります。
  • 気分安定薬双極症への移行リスクがある場合や、気分の不安定さが目立つ場合に検討されることもあります。

医師の指示に従い、決められた量を決められた時間に服用することが非常に大切です。副作用が気になる場合は、自己判断で中断せずに、必ず医師に相談しましょう。

3. 生活習慣の改善

規則正しい生活リズムと健康的な生活習慣は、持続性抑うつ症の症状を和らげ、再発予防に非常に重要です。

  • 規則正しい睡眠寝る時間と起きる時間を一定に保ち、質の良い睡眠を心がけましょう。
  • バランスの取れた食事栄養バランスの取れた食事を規則的に摂りましょう。
  • 適度な運動体調に合わせて、散歩や軽い体操など、無理のない範囲で体を動かすことは、気分の改善やストレス軽減に繋がります。
  • ストレス管理ストレスの原因を特定し、リラクゼーション法(深呼吸、瞑想など)や趣味、休息などでストレスを上手に管理する方法を身につけましょう。

4. 周囲のサポートと社会復帰支援

ご家族や周囲の理解とサポートは、持続性抑うつ症の回復にとって大きな力となります。

  • ご家族への支援家族会や相談会などを通じて、病気への理解を深め、ご本人への接し方(無理に励まさない、ゆっくり話を聞いてあげるなど)、ご家族自身のストレスケアについて学ぶことができます。
  • 就労支援症状が安定し、社会復帰を目指す段階では、ハローワークの障害者専門援助部門や、就労移行支援事業所など、病気の特性を理解した上で、仕事を見つけ、職場で長く働き続けられるようサポートする機関があります。高崎市にも、ハローワーク高崎や群馬県発達障害者支援センターなど、様々な支援機関がありますね。(20257月現在)
  • デイケア・作業療法規則正しい生活リズムの獲得、作業活動を通じた集中力の向上、人との交流、社会参加への準備などを行います。

5. 再発予防と早期発見

持続性抑うつ症は、症状が改善しても再発する可能性のある病気です。再発を防ぐためには、継続的な治療と、ご本人や周囲が症状の変化を早期に察知することが重要です。

  • 症状の日記自分の体調や精神状態の変化(特に気分の落ち込み、睡眠、食欲の変化など)を記録することで、症状の悪化のサインに気づきやすくなります。
  • 定期的な受診症状が安定していても、自己判断で治療を中断せず、定期的に医療機関を受診し、医師と相談しながら治療を続けることが再発予防につながります。

まとめ:慢性的な不調は「性格」ではなく「病気」です。一歩踏み出して、穏やかな日常へ

持続性抑うつ症は、その症状の軽さと慢性さゆえに、本人が病気と気づきにくい「見えにくい心の不調」です。しかし、この状態を放置すると、日常生活の質が低下したり、より重い精神疾患へと移行したりするリスクがあります。

重要なのは、気分の不調を「自分の性格だから」と諦めず、これは適切な支援で改善できる「病気」であると認識することです。一人で抱え込まずに、専門家や支援機関に頼ることで、症状をコントロールし、自分らしい穏やかな生活を送ることが十分に可能です。

もし、ご自身やご家族、身近な方で持続性抑うつ症の症状に心当たりのある方がいる場合は、早めに精神科や心療内科を受診することをお勧めします。早期の診断と介入が、回復への道を開く鍵となります。

慢性的な心の不調を抱えているあなたは、一人ではありません。多くの支援者が、あなたの回復を心から応援し、サポートするためにここにいます。希望を持って、穏やかな日常への一歩を踏み出しましょう。

 

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