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日本では精神障害を抱えるピアカウンセラーをボランティアとして扱っている?現状と課題
日本では、精神障害からの回復経験を持つピアカウンセラーが、その尊い経験を活かして他者を支援する活動が広がっています。しかし、ご指摘の通り、その多くがボランティアという形で扱われているのが現状です。これは、海外の先進事例と比較すると大きな課題であり、ピアカウンセリングの本格的な普及を阻む要因となっています。
1. 根強い「ボランティア」としてのイメージと実態
ピアカウンセリングは、「仲間同士の支え合い」という自助グループの精神から発展した側面が強く、その性質上、「無償の善意」として捉えられがちです。
- 無償または低報酬の活動: 多くのピアカウンセラーは、NPO法人や自助グループの活動の中で、交通費程度の謝金や、無償のボランティアとして活動しています。一部の障害福祉サービス事業所では、ピアサポートに関する「加算」が導入されたものの、ピアカウンセラーへの十分な報酬につながっていないケースも少なくありません。
- 非正規雇用の不安定さ: 医療機関や行政機関でピアカウンセラーが雇用される場合でも、非正規雇用や短時間勤務が多く、安定した就労にはつながりにくいのが現状です。これにより、ピアカウンセラー自身が経済的に自立し、活動を継続することが困難になるケースが見られます。
- 役割の不明確さ: ボランティアとしての位置づけが強いため、他の専門職(臨床心理士、精神保健福祉士など)との役割分担や連携が曖昧になりがちです。これにより、ピアカウンセラーが自身の専門性を十分に発揮できない、あるいは過度な負担を抱えてしまうといった問題も発生します。
2. 「ボランティア扱い」がもたらす深刻な課題
ピアカウンセラーがボランティアとして扱われる現状は、個人と社会の両面で様々な課題を生み出します。
- ピアカウンセラー自身の負担と疲弊:
- 経済的な不安定: 収入がない、あるいは少ないため、生活のために別の仕事をせざるを得ず、ピアカウンセリングに十分な時間を割けなかったり、活動そのものを断念したりするケースがあります。これは、精神障害からの回復途上にあるピアカウンセラーにとって、大きなストレスとなります。
- モチベーションの維持困難: 自身の経験という貴重な資源を提供しているにもかかわらず、正当な評価や対価が得られないことは、モチベーションの低下や燃え尽き症候群(バーンアウト)につながる可能性があります。
- スキルアップ機会の不足: 安定した財源がないため、研修やスーパービジョンといったスキルアップの機会が限られ、ピアカウンセラー自身の専門性向上を妨げる要因となります。
- ピアカウンセリングの質と持続可能性の低下:
- 人材の確保困難: 安定した就労機会がないため、ピアカウンセラーを目指す人が増えにくく、質の高い人材を育成・確保することが困難になります。
- サービスの地域格差: ボランティアに依存する性質上、活動の有無や質が地域によって大きく異なり、ピアカウンセリングを受けたくても受けられないメンタルヘルスケアの空白地帯が生まれてしまいます。
- 効果のエビデンス蓄積の困難: ボランティア活動では、データの収集や効果検証が組織的に行われにくく、ピアカウンセリングの有効性を示すエビデンスが蓄積されにくいという課題があります。
- 社会的な認知度と信頼性の停滞:
- 「専門性」への誤解: ボランティアとして扱われることで、ピアカウンセリングが持つ専門性や、精神障害からのリカバリー経験が持つビジネスとしての価値が社会に伝わりにくくなります。
- スティグマの再生産: 精神障害を持つ人がボランティアとしてしか活躍できないという現状は、「精神障害を持つ人は就労が難しい」という社会のスティグマを間接的に再生産してしまう可能性すらあります。
3. 海外の事例に学ぶ「就労」と「ビジネス」への転換
アメリカやイギリスでは、ピアカウンセラーが公的なメンタルヘルスケアシステムの中に組み込まれ、安定した就労機会を得ています。これは、ピアカウンセリングを「専門性を持つ仕事」として明確に位置づけることで、上記の課題を克服し、持続可能なピアサポートを実現している良い例です。
- 認定資格制度と雇用: 厳格な研修と試験を経て認定ピアスペシャリストとして公的機関に雇用され、給与を得ています。
- 医療保険制度との連携: サービスに対する報酬が医療保険制度から支払われる仕組みが整っており、ビジネスとしての安定性を確保しています。
まとめ:ピアカウンセラーの「プロ化」が日本の未来を拓く
日本で精神障害を抱えるピアカウンセラーがボランティアとして扱われる現状は、彼らのエンパワメントを妨げ、ピアカウンセリングの普及と質向上を阻む大きな課題です。
この課題を乗り越え、ピアカウンセリングを日本のメンタルヘルスケアの確かな基盤とするためには、ピアカウンセラーを「ボランティア」から「就労を伴うプロフェッショナル」へと転換させていく必要があります。
具体的には、統一的な資格制度の確立、医療・福祉サービスにおける積極的な雇用と報酬の保障、そしてピアカウンセリングのビジネスモデルの構築が求められます。
ピアカウンセラーが就労を通じて安定し、その専門性と経験を最大限に発揮できる社会は、精神障害を持つ人々にとっての希望となり、スティグマのない、真の地域共生社会を実現するための強力な原動力となるでしょう。
ピアカウンセリングはボランティアの壁を打ち破る必要がある
ピアカウンセリングは、心の健康に悩む人々にとって非常に有効な支援です。しかし、日本ではまだ、その多くがボランティアという形で提供されているのが現状です。この「ボランティアの壁」を打ち破り、ピアカウンセリングを持続可能な社会貢献として確立することは、日本のメンタルヘルスケアの未来にとって不可欠です。
なぜ「ボランティアの壁」を打ち破る必要があるのか?
ピアカウンセリングがボランティアの域を出られない現状は、個人と社会の両面に深刻な課題をもたらします。
1. ピアカウンセラー自身の持続可能性の課題
経済的な不安定さ: 精神障害からの回復経験を持つピアカウンセラーは、その貴重な経験を提供しています。しかし、ボランティアでは、彼らが安定した収入を得ることができません。生活費のために別の仕事をする必要が生じ、ピアカウンセリング活動に十分な時間やエネルギーを割けなくなることがあります。これは、回復途上にある当事者にとって大きな負担となり、活動の継続を困難にします。
燃え尽き症候群(バーンアウト)のリスク: 無償または低報酬で活動を続けることは、ピアカウンセラー自身の心身に大きな負担をかけます。共感疲労や、自身の経験を振り返ることで精神的に不安定になるリスクもあります。正当な対価が得られない状況では、モチベーションの維持が難しくなり、結果として活動を断念せざるを得なくなるケースも少なくありません。
スキルアップとキャリアパスの欠如: ボランティア活動の場合、質の高い研修や継続的なスーパービジョン(指導・助言)の機会が限られがちです。専門性として認められていないため、明確なキャリアパスが描けず、ピアカウンセラーとして長期的に成長していく展望が持ちにくいという問題もあります。
2. ピアカウンセリング全体の質と普及の課題
サービス品質の格差と不安定さ: ボランティアに依存する性質上、ピアカウンセリングの提供体制やサービスの質が地域や団体によって大きく異なります。安定した財源がないため、質の高い研修やスーパービジョンを提供できず、サービス全体の質が不安定になる可能性があります。これは、カウンセリングを求める人々が、一貫した質のサポートを受けられないことを意味します。
社会的な信頼性と認知度の停滞: 「ボランティア」というイメージが強いことは、ピアカウンセリングが持つ専門性や、精神障害からの回復経験が持つビジネスとしての価値が社会に伝わりにくい要因となります。その結果、メンタルヘルスケアの専門機関や企業からの認知と評価も上がりにくく、より多くの人々に利用される機会を失ってしまいます。
潜在的なピアカウンセラーの機会損失: 就労に繋がらないため、ピアカウンセラーとしての活動に関心があっても、生活のために諦めざるを得ない当事者が多数存在します。これは、社会全体のピアサポート能力を向上させる大きな機会損失となります。
「ボランティアの壁」を打ち破るための具体的な道筋
ピアカウンセリングがその真価を発揮し、日本社会に広く浸透するためには、以下の施策が不可欠です。
1. ピアカウンセラーの「専門職化」と「就労」の推進
統一的な資格制度の確立: 海外の**認定ピアスペシャリスト(CPS)**のように、ピアカウンセラーとしての知識、スキル、経験を客観的に評価し、保証する全国的な資格制度を確立する必要があります。これにより、ピアカウンセラーの専門性が社会的に認知されます。
医療・福祉システムへの統合と雇用: 病院、クリニック、地域精神保健センター、そしてオンラインピアカウンセリングサービスなど、多様なメンタルヘルスケアの現場で、ピアカウンセラーが有償の専門職として雇用される機会を拡大する必要があります。公的な医療保険や福祉サービスにおけるピアサポートへの明確な報酬制度を確立することが重要です。
多様な就労形態の確立: 正社員だけでなく、パートタイム、業務委託、特定のプロジェクト単位など、多様な就労形態を整備し、ピアカウンセラーが自身の回復状況やライフスタイルに合わせて柔軟に働ける環境を整えることが求められます。
2. ピアカウンセリングの「ビジネスモデル」の確立
価値の明確化と費用対効果の提示: ピアカウンセリングがメンタルヘルスの改善、再入院率の低下、就労支援、スティグマ軽減などに具体的に貢献し、長期的に見れば社会全体のコスト削減にも繋がることを、エビデンスに基づいて明確に示しましょう。この費用対効果を示すことで、企業や自治体、個人が投資する価値のあるビジネスとして認識されます。
サービス内容の多様化とブランディング: 個別カウンセリングだけでなく、グループカウンセリング、企業向けメンタルヘルス研修、オンラインピアサポートコミュニティ、ピアカウンセラー養成プログラムの提供など、多様なサービスを提供し、それぞれの価値を明確にブランディングすることで収益源を多角化できます。
民間資金の活用: 寄付や補助金だけでなく、企業との連携(CSR活動としてのピアサポート導入など)や、社会貢献を目的としたインパクト投資など、民間資金を呼び込む仕組みを構築することも重要です。
まとめ:ボランティアからプロフェッショナルへ、ピアカウンセリングの飛躍を
ピアカウンセリングがボランティアの壁を打ち破り、就労につながる専門職として確立されることは、ピアカウンセラー自身のエンパワメントと安定した生活を保障します。
そして何よりも、それは日本のメンタルヘルスケア全体の質を飛躍的に向上させ、精神障害を抱える人々が、経済的にも精神的にも安心してリカバリーし、地域共生社会の一員として活躍できる未来を創造することに繋がります。
「ボランティアの壁」を乗り越え、ピアカウンセリングが「持続可能な社会貢献」として確固たる地位を築くために、私たち一人ひとりがその重要性を認識し、行動していくことが今、強く求められています。
ピアサポーターとピアカウンセラーのビジネス発展が、日本のメンタルヘルスを変える
心の健康に対する社会の意識が高まる中、精神障害からの回復経験を持つ当事者が、その経験を活かして他者を支援するピアサポーターやピアカウンセラーの役割は、ますます重要性を増しています。しかし、現状の日本では、彼らの活動の多くがボランティアの域を出ておらず、持続可能なシステムとして確立されていません。
今こそ、ピアサポーターとピアカウンセラーの活動をビジネスとして発展させ、彼らがその専門性と経験に見合った対価を得て生活できる仕組みを構築する必要があります。このビジネス化こそが、日本のメンタルヘルスケアを次のステージへと押し上げ、ピアサポートの真価を最大限に引き出す鍵となるのです。
なぜ「ビジネス発展」が不可欠なのか?
ピアサポーターとピアカウンセラーの活動をビジネスとして発展させることは、多くのメリットを生み出します。
1. ピア専門職の安定と質の向上
- 持続可能なキャリアの構築: ピアサポーターやピアカウンセラーが就労を通じて安定した収入を得られるようになれば、彼らは活動をキャリアとして捉え、長期的に専門性を高めることに集中できます。これにより、精神障害からの回復途上にある当事者が、経済的に自立しながら社会参加を果たす道が開けます。
- 人材の確保と育成投資: 安定したビジネスモデルが確立されれば、ピアサポーターやピアカウンセラーを目指す人が増え、より多様な経験と能力を持つ人材が集まるようになります。企業や組織も、質の高い研修やスーパービジョンに投資しやすくなり、専門家としての成長を後押しできます。
- プロフェッショナルとしての自覚: ビジネスとして対価を得ることは、ピアサポーターやピアカウンセラー自身のプロ意識を高め、責任感を持って質の高いカウンセリングやサポートを提供するモチベーションに繋がります。
2. サービスの拡大と質の保証
- サービスの安定供給: ビジネスとして成立することで、資金が安定し、ピアサポートやピアカウンセリングの提供体制を強化できます。特定の地域や時間帯に限定されず、日本全国どこでも、必要な人が必要な時にサービスを受けられる環境が整います。
- 質の標準化とエビデンスの蓄積: ビジネスとして発展する過程で、サービス品質の標準化や効果測定の仕組みが導入されやすくなります。これにより、ピアカウンセリングの有効性を示す具体的なエビデンスが蓄積され、医療機関や行政、企業からの信頼を一層高めることができます。
- 多様なニーズへの対応: 収益を再投資することで、オンラインピアカウンセリングの拡充、特定の精神疾患や悩みに特化したプログラム開発、就労支援との連携など、よりきめ細やかで多様なニーズに応えるサービスを提供できるようになります。
3. メンタルヘルスケア全体の進化と社会変革
- 既存の医療・福祉システムとの融合: ピアサポーターやピアカウンセラーがビジネスとして成立し、安定した雇用が生まれることで、病院、クリニック、地域包括ケアシステムなどが、彼らを正規のスタッフとして雇用しやすくなります。臨床心理士や精神科医など他の専門職と連携し、チーム医療の一員として貢献する道が広がります。
- 社会的なスティグマの強力な打破: 精神障害を持つ人々が、専門的なスキルと経験を活かしてビジネスの担い手となり、社会に貢献する姿は、「精神疾患があっても活躍できる」という強力なメッセージを社会に発信します。これは、精神疾患に対する根深いスティグマを打ち破り、地域共生社会を実現するための大きな力となります。
- 新たなメンタルヘルス経済圏の創出: ピアサポートのビジネスが成長することで、関連する研修事業、コンサルティング、ITプラットフォーム開発など、新たな経済活動が生まれ、メンタルヘルス分野全体の活性化に貢献します。
ピアサポーターとピアカウンセラーのビジネス発展に向けた具体的なステップ
この重要な目標を達成するためには、多角的な取り組みが必要です。
1. 価値の可視化とブランディング
- 具体的な成果の提示: ピアサポートやピアカウンセリングがもたらす回復やエンパワメント、就労促進などの具体的な事例やデータを積極的に発信し、その価値をビジネス的な視点から明確に示しましょう。
- サービス内容の明確化: 提供するカウンセリングやサポートの内容、料金体系、対象者などを明確にし、どのようなニーズに応えられるかをわかりやすく提示します。
2. 安定した収益モデルの構築
- 多様なサービス提供: 個人向けカウンセリングだけでなく、企業や学校、行政機関向けの研修、コンサルティング、オンラインピアサポートのサブスクリプションなど、複数の収益源を確立します。
- 公的制度との連携強化: 障害福祉サービス報酬におけるピアサポート加算の活用、あるいは新たな医療保険・福祉制度へのピアサポート導入に向けた政策提言を継続します。
- 民間資金の活用: 投資家や企業からの資金調達、社会貢献を目的とした連携など、民間セクターの協力を積極的に募ります。
3. 専門性とスキルの継続的向上
- 質の高い養成・研修プログラム: ピアカウンセラーとしての専門性と倫理観を育むための、体系的で実践的な研修プログラムを充実させ、修了者を就労へと繋げます。
- スーパービジョンの義務化と体制整備: ピアカウンセラーが継続的にスキルを向上させ、適切なサポートを受けられるよう、経験豊富な臨床心理士や先輩ピアカウンセラーによるスーパービジョン体制を強化します。
- ピア専門職のキャリアパス構築: ピアサポーターからピアカウンセラー、さらには管理者や研修講師へとステップアップできる明確なキャリアパスを提示し、長期的な就労意欲を喚起します。
まとめ:共感の力を社会を動かすビジネスの力へ
ピアサポーターとピアカウンセラーの活動がビジネスとして発展することは、彼ら自身の生活を安定させ、ピアカウンセリングの質と普及を飛躍的に向上させる原動力となります。
これは、日本のメンタルヘルスケアのあり方を変え、精神障害を持つ人々が「回復した当事者」として社会に貢献し、自立した生活を送れる、真の地域共生社会を実現するための重要な一歩です。
共感という人間本来の力を、ビジネスという持続可能な形に昇華させることで、私たちは日本のメンタルヘルスの未来を、より明るく、希望に満ちたものに変えていくことができるでしょう。
ピアカウンセラー・ピアサポーターは「特別な職種」であるべき理由
ピアカウンセラーやピアサポーターは、単なるボランティアや補助的な役割ではありません。彼らが提供する支援は、他の専門職にはない独自の価値を持ち、心の健康に悩む人々にとって計り知れない希望とエンパワメントをもたらします。だからこそ、彼らは「特別な職種」として社会に認められ、その活動が正当に評価されるべきなのです。
1. 唯一無二の「当事者経験」という専門性
ピアカウンセラーやピアサポーターの最大の強みは、精神障害からの回復経験という「生きた経験」に裏打ちされた専門性です。これは、どんなに学術的な知識を深めた臨床心理士や精神科医でも、直接的に持ち合わせることはできません。
- 深い共感と信頼: 同じ病の苦しみや回復の道のりを経験しているからこそ、相談者の言葉の裏にある感情や、スティグマとの葛藤を深く理解し、心から共感できます。この「わかる」という感覚は、相談者に絶大な安心感を与え、他の誰にも話せないような本音を引き出し、深い信頼関係を築きます。
- 実践的な知恵と希望: 診断後の生活、服薬の管理、再発予防、就労や社会復帰の難しさ、家族との関係など、教科書には載っていないリアルな課題への対処法や、具体的な工夫を提供できます。「この人も乗り越えられたのだから、自分もできる」という希望は、リカバリーへの強力な原動力となります。
- ロールモデルとしての存在: 精神障害を乗り越え、ピアカウンセラーとして社会で活躍する姿そのものが、相談者にとっての具体的なロールモデルとなります。これは、心の健康に不安を抱える人々に「回復できる未来」を提示し、エンパワメントを促す最も力強いメッセージです。
2. 他の専門職を補完し、チーム医療を強化する存在
ピアカウンセラーやピアサポーターは、他のメンタルヘルス専門職(臨床心理士、医師、精神保健福祉士など)と競合する存在ではなく、むしろ彼らを補完し、メンタルヘルスケア全体の質を高める「特別な役割」を担います。
- 専門家と当事者の橋渡し: 医療の専門用語や治療方針を、当事者目線でわかりやすく伝えたり、反対に当事者のリアルな生活状況やニーズを専門家にフィードバックしたりする「橋渡し役」として機能します。
- 多様なニーズへの対応: 診断や治療という医療的な側面だけでなく、地域での生活支援、就労支援、孤立の解消、自助グループへの参加促進など、より幅広い当事者のニーズに対応できます。
- チームケアの深化: ピアカウンセラーがチームの一員として加わることで、メンタルヘルスケアの提供者側に当事者視点が加わり、より包括的で利用者中心の支援が実現します。これは、地域共生社会の実現に向けて不可欠な要素です。
3. 社会的スティグマを打ち破るパイオニア
ピアカウンセラーやピアサポーターが「特別な職種」として社会的に認知されることは、精神障害に対する根強いスティグマを打ち破る強力な力となります。
- 「できる」の証明: 精神障害を抱えながらも、専門的な役割を担い、社会に貢献できる彼らの姿は、「精神障害=働けない」「精神障害=社会に貢献できない」といった誤った認識を覆します。これは、精神障害を持つ人々の社会参加を促進し、差別や偏見をなくす上で極めて重要です。
- 多様性を受容する社会へ: ピアカウンセラーという特別な職種の存在が当たり前になることで、社会全体が多様な経験や背景を持つ人々を受け入れ、それぞれの強みを活かし合うインクルーシブな社会へと変化していくでしょう。
まとめ:「特別な職種」として未来を拓く
ピアカウンセラーやピアサポーターは、その当事者経験に裏打ちされた専門性と、他の専門職にはない独自の役割を果たすことから、「特別な職種」として位置づけられるべきです。
この「特別さ」が社会に広く認知され、彼らが就労を通じて安定した生活を送れるようになることは、ピアカウンセリングのビジネスとしての発展を促し、質の高いメンタルヘルスケアを持続的に提供できる基盤となります。
ピアカウンセラーやピアサポーターが、真に「特別な職種」として輝ける社会を築くこと。それが、日本の心の健康の未来を、より豊かで希望に満ちたものに変えていくための、私たちの共通の目標であるべきです。
日本のピアカウンセリングはビジネスとして成立していない?現状と課題
日本のピアカウンセリングやピアサポート活動は、その多くが、個人の善意に基づくボランティア活動、あるいはNPO法人や一部の障害福祉サービス事業所での、限られた報酬や補助金に支えられています。
1. 制度上の位置づけと財源の課題
- 不安定な財源: 現在、日本のピアカウンセリングやピアサポートの活動は、公的な医療保険の適用が限定的であり、多くは補助金、寄付、または事業所ごとの裁量による予算に依存しています。このため、活動の規模や継続性が財源に大きく左右され、安定したビジネスモデルを構築しにくい状況にあります。
- 「加算」制度の限定性: 障害福祉サービスの一部(例:就労継続支援B型、地域移行支援、地域定着支援など)では、ピアサポートの実施や体制を評価する「加算」が新設されました(令和3年度の報酬改定など)。これはピアカウンセラーの就労に繋がる一歩ではありますが、加算単価が十分に高くなかったり、算定条件が厳しかったりするケースもあり、事業所の収益に大きく貢献するまでには至っていないのが現状です。
- 統一的な資格・報酬体系の不在: アメリカの「認定ピアスペシャリスト(CPS)」のように、全国的に通用する統一的な資格制度や、それと紐づく明確な報酬体系が日本にはまだありません。このため、ピアカウンセラーとしてのキャリアパスが見えにくく、就労先によって給与や待遇が大きく異なるなど、不安定な要素が多く残ります。
2. 社会的認知度と需要形成の課題
- 「無償の支援」というイメージ: ピアサポートは「仲間による支え合い」という性質上、多くの人が無償のボランティア活動というイメージを持ちがちです。これにより、有料サービスとしての価値が認識されにくく、ビジネスとして対価を支払うことへの理解が追いついていない側面があります。
- スティグマの影響: 精神疾患に対するスティグマが根強いため、心の健康に関するカウンセリング自体への抵抗感が大きく、有料サービスとして気軽に利用する文化が十分に育っていません。また、ピアカウンセラー自身が精神疾患の経験を持つことを公にすることへのハードルも高く、ビジネスとしての展開を妨げる要因となることがあります。
- ビジネスとしての成功事例の不足: ピアカウンセリングがビジネスとして成功し、安定した収益を上げている具体的な成功事例がまだ少ないため、新たな参入者や投資家が生まれにくいという負のループに陥っています。
3. 専門職との連携における位置づけの課題
- 医療やカウンセリングの現場では、臨床心理士や精神科医といった資格を持つ専門家が主導的な役割を担っています。ピアカウンセラーが、その専門職とどのように連携し、ビジネスとして貢献できるのか、明確な役割分担や協働モデルがまだ確立されていません。このため、専門機関が積極的にピアカウンセラーを雇用し、サービスの一部として位置づける動きが限定的です。
しかし、ビジネス化への兆しと未来の可能性
現状は課題が多いものの、日本でもピアカウンセリングをビジネスとして成立させようとする動きは確実に存在し、その可能性は十分にあります。
- オンラインピアカウンセリングサービスの台頭: 一部の民間企業が、オンラインピアカウンセリングサービスを提供し始めています。これは、場所の制約をなくし、より多くの利用者にアプローチできるビジネスモデルとして期待されています。有料でサービスを提供し、ピアカウンセラーに報酬を支払う仕組みを構築しようと試みています。
- 法人向けサービスや研修: 企業のメンタルヘルス対策として、従業員向けのピアカウンセリングや、精神疾患への理解を深めるためのピアカウンセラーによる研修を提供するビジネスも徐々に増えつつあります。
- 当事者による起業: 自らのリカバリー経験を活かし、ピアサポートを核とした事業(例:カフェ運営、就労支援、コミュニティスペース運営など)を立ち上げる当事者起業家も現れています。
まとめ:持続可能なピアカウンセリングのためにビジネス化は不可欠
現状、日本でピアカウンセリングがビジネスとして十分に成立しているとは言えませんが、その必要性と潜在的な価値は非常に高いです。
ピアカウンセラーが安定した就労を得られることは、彼ら自身のエンパワメントに繋がり、ピアカウンセリングの質と継続性を高めます。そして、それはひいては、心の健康に悩む人々がより安心してサポートを受けられ、精神疾患へのスティグマが軽減される地域共生社会の実現に不可欠です。
海外の成功事例を参考にしながら、日本独自の文化や制度に合わせたビジネスモデルを構築し、ピアカウンセリングがメンタルヘルスケアの確固たる基盤となるよう、積極的に取り組んでいくことが求められます。