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2025-07-26 12:48:00

ADHDとオンラインカウンセリング:Zoomで広がる支援の選択肢

**注意欠如・多動症(ADHDは、生まれつきの脳機能の特性による神経発達症(発達障害)**の一つです。主に「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの特性がみられ、これらの特性が、学業、仕事、対人関係、日常生活などの様々な場面で困難を引き起こします。

ADHDは子どもだけの問題だと考えられがちですが、実はその特性の多くは成人期まで持ち越されることが分かっています。大人になってから、仕事や家庭生活で困難に直面し、初めてADHDの診断を受けるケースも少なくありません。

ADHDの主な特性

ADHDの特性は、以下に挙げる「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの要素に分けられます。ただし、これらの特性の現れ方や程度は、一人ひとり大きく異なります。

1. 不注意(集中力の維持が難しい)

細かいミスが多い(ケアレスミス)。集中力が続かず、すぐに気が散ってしまう。忘れ物や物をなくすことが多い。約束や期日を守れない、遅刻が多い。計画を立てたり、順序立てて物事を進めたりするのが苦手。長時間の精神的な努力を要する作業を嫌う。直接話しかけられても、聞いていないように見えることがある。途中で飽きて、物事を最後までやり遂げられない。

2. 多動性(落ち着きのなさ)

じっとしていられない、ソワソワする。手足をもぞもぞ動かす、貧乏ゆすりをする。椅子に座っていても、立ち歩いてしまう。過度にしゃべり続ける。静かに遊ぶことや、余暇活動におとなしく参加することが難しい。

3. 衝動性(思いついたらすぐに行動してしまう)

質問が終わらないうちに、出し抜けに答えてしまう。順番を待つのが苦手。他の人の会話やゲームに割り込んでしまう。感情のコントロールが難しく、カッとなりやすい。衝動買いや無謀な行動に出てしまうことがある。熟考せずに行動してしまうため、後で後悔することが多い。

成人期ADHDの特性の現れ方

子どもの頃に比べて、大人のADHDでは多動性が目立たなくなる一方で、不注意衝動性が形を変えて生活上の困難として現れることが多いです。

  • 不注意仕事でのケアレスミス、期限忘れ、会議に集中できない、資料の整理が苦手、複数のタスクを同時にこなせない、時間管理ができないなど。
  • 多動性体の動きとしてではなく、心の中でソワソワする感じ、常に何かしていないと落ち着かない、過剰なおしゃべり、多弁として現れることがあります。
  • 衝動性会議中の不用意な発言、衝動買い、感情の爆発、人間関係でのトラブル、金銭管理の困難など。

これらの特性のために、仕事での評価が上がらなかったり、人間関係で孤立したり、自己肯定感が低下してうつ病や不安障害などの二次障害を併発するケースも少なくありません。

ADHDの原因

ADHDの詳しい原因はまだ完全には解明されていませんが、これまでの研究から、生まれつきの脳機能の特性が大きく関係していると考えられています。親のしつけや環境が直接的な原因ではありません。

  • 脳の構造と機能の偏り特に、前頭前野と呼ばれる脳の部位の機能調整に偏りがあることが指摘されています。前頭前野は、思考、判断、注意、計画、行動のコントロールといった「実行機能」を司る重要な役割を担っています。ADHDでは、この部分の働きが非定型であることが、不注意や多動性、衝動性につながると考えられています。
  • 神経伝達物質の不足脳内のドーパミンノルアドレナリンといった神経伝達物質の働きが関係しているという説も有力です。これらの物質は、情報伝達や意欲、注意、集中力などに関与しており、ADHDのある人ではこれらの神経伝達物質の量が少なかったり、その働きが効率的でなかったりすることで、情報伝達がうまくいかないと考えられています。

ADHDは「育て方が悪いからなる」といったものではなく、親のしつけや環境が直接的な原因ではありません。遺伝的要因が大きく関与しており、遺伝的傾向に加えて、周産期の問題(早産、低出生体重など)や環境要因が影響することもあると言われています。

ADHDの診断と治療

ADHDの診断は、小児科医、児童精神科医、精神科医などが、発達の経過、問診、症状の現れ方、行動観察、各種検査(心理検査、知能検査など)を通じて総合的に行われます。診断基準としては、国際的なものとしてDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)やICD-11(国際疾病分類)が用いられます。

ADHDの治療は、主に「心理社会的治療(非薬物療法)」と「薬物療法」の二本柱で行われます。一人ひとりの特性や困り感に合わせて、これらのアプローチが組み合わせて用いられます。

1. 心理社会的治療(非薬物療法)

  • 環境調整本人の特性に合わせて、生活や学習、仕事の環境を工夫することです。例えば、気が散りやすい場合は静かな場所で作業する、忘れ物が多い場合はチェックリストを活用する、整理整頓が苦手な場合は物の定位置を決める、といった具体策を講じます。
  • 行動療法望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らすための支援です。褒めること(ポジティブな強化)を積極的に取り入れたり、行動のきっかけや結果を分析して改善を図ったりします。子どもには「トークンエコノミー法」などが用いられることもあります。
  • 認知行動療法(CBT不注意や衝動性から生じるネガティブな思考パターンや、それによって引き起こされる感情、行動を客観的に見つめ、より適応的な思考や行動に修正していくことを目指します。時間管理、計画立案、衝動性のコントロールなどのスキルを学ぶことも含まれます。
  • ソーシャルスキルトレーニング(SST対人関係のスキルや社会的なルールを学び、実践的な練習をすることで、コミュニケーション能力や社会適応能力の向上を目指します。
  • ペアレントトレーニング: ADHDのある子どもを持つ保護者が、子どもの特性を理解し、適切な接し方や具体的な対処法を学ぶプログラムです。
  • カウンセリング自身の特性を理解し、自己肯定感を高め、日常生活の困難への対処法を模索するための支援です。

2. 薬物療法

ADHDの症状を和らげるための薬物もいくつか開発されています。これらの薬は、脳内の神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリンなど)の働きを調整することで、不注意、多動性、衝動性の症状を改善する効果が期待できます。

  • 主に、中枢神経刺激薬(メチルフェニデート塩酸塩、アンフェタミン類など)や、非中枢神経刺激薬(アトモキセチン、グアンファシンなど)があります。
  • 薬物療法は、医師が患者さんの年齢、症状、健康状態などを考慮して慎重に処方し、効果や副作用を定期的に評価しながら進められます。

ADHDの治療は、薬物療法だけで完結するものではなく、心理社会的治療と組み合わせて行うことで、より効果的な症状の改善と生活の質の向上が期待できます。

ADHDとオンラインカウンセリング:Zoomの活用

近年、オンラインカウンセリングの普及が進み、Zoomなどのビデオ通話ツールを用いたカウンセリングは、ADHDのある方々にとって新たな支援の選択肢となっています。

  • アクセスのしやすさ遠隔地からでも専門家のカウンセリングを受けられ、通院の負担を軽減できます。移動に困難を感じる方や、近くに専門機関がない地域の方にとって特に有効です。
  • 慣れた環境でのリラックス自宅など慣れた場所からカウンセリングを受けられるため、新しい環境への適応に伴う不安やストレスを軽減できます。これにより、よりリラックスして自身の課題と向き合いやすくなります。
  • 柔軟なスケジュール移動時間がない分、多忙なスケジュールの中でもカウンセリングを組み込みやすくなります。不注意による遅刻の心配も減り、継続的な支援を受けやすくなります。
  • 視覚支援の活用: Zoomの画面共有機能などを活用し、カウンセラーが具体的な表や図、チェックリストなどを共有しながら、時間管理や整理整頓、計画立案といったスキルを効果的に指導できます。これは、情報処理に特性のあるADHDのある方にとって非常に役立ちます。

オンラインカウンセリングは、対面カウンセリングの代替となるものではなく、補完的な役割を果たすものです。ご自身の状態やニーズに合わせて、主治医や専門家と相談しながら、最適な支援の形を選ぶことが重要です。

ADHDと向き合うために

ADHDの特性は、その人の「性格」や「怠け癖」ではなく、脳の機能特性によるものです。そのため、ご自身や周囲の人が「なぜできないんだろう」と悩んだり、責めたりする必要はありません。

大切なのは、自身の特性を正しく理解し、その特性から生じる困難に対して適切な対処法を学び、必要に応じて周囲のサポートを得ることです。早期に診断を受け、適切な支援や治療を開始することで、特性を強みとして活かし、より充実した社会生活を送ることが可能になります。

もし、ご自身やご家族、身近な人にADHDの特性が疑われる場合は、一人で抱え込まず、専門機関(精神科、心療内科、発達外来など)に相談してみましょう。

 

2025-07-26 12:46:00

注意欠如・多動症(ADHD)とは?特性と向き合い、可能性を広げる

**注意欠如・多動症(ADHDは、生まれつきの脳機能の特性による神経発達症(発達障害)**の一つです。主に「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの特性がみられ、これらの特性が、学業、仕事、対人関係、日常生活などの様々な場面で困難を引き起こします。

ADHDは子どもだけの問題だと考えられがちですが、実はその特性の多くは成人期まで持ち越されることが分かっています。大人になってから、仕事や家庭生活で困難に直面し、初めてADHDの診断を受けるケースも少なくありません。

ADHDの主な特性

ADHDの特性は、以下に挙げる「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの要素に分けられます。ただし、これらの特性の現れ方や程度は、一人ひとり大きく異なります。

1. 不注意(集中力の維持が難しい)

  • 細かいミスが多い(ケアレスミス)
  • 集中力が続かず、すぐに気が散ってしまう
  • 忘れ物や物をなくすことが多い
  • 約束や期日を守れない、遅刻が多い
  • 計画を立てたり、順序立てて物事を進めたりするのが苦手
  • 長時間の精神的な努力を要する作業を嫌う
  • 直接話しかけられても、聞いていないように見えることがある
  • 途中で飽きて、物事を最後までやり遂げられない

2. 多動性(落ち着きのなさ)

  • じっとしていられない、ソワソワする
  • 手足をもぞもぞ動かす、貧乏ゆすりをする
  • 椅子に座っていても、立ち歩いてしまう
  • 過度にしゃべり続ける
  • 静かに遊ぶことや、余暇活動におとなしく参加することが難しい

3. 衝動性(思いついたらすぐに行動してしまう)

  • 質問が終わらないうちに、出し抜けに答えてしまう
  • 順番を待つのが苦手
  • 他の人の会話やゲームに割り込んでしまう
  • 感情のコントロールが難しく、カッとなりやすい
  • 衝動買いや無謀な行動に出てしまうことがある
  • 熟考せずに行動してしまうため、後で後悔することが多い

成人期ADHDの特性の現れ方

子どもの頃に比べて、大人のADHDでは多動性が目立たなくなる一方で、不注意衝動性が形を変えて生活上の困難として現れることが多いです。

  • 不注意仕事でのケアレスミス、期限忘れ、会議に集中できない、資料の整理が苦手、複数のタスクを同時にこなせない、時間管理ができないなど。
  • 多動性体の動きとしてではなく、心の中でソワソワする感じ、常に何かしていないと落ち着かない、過剰なおしゃべり、多弁として現れることがあります。
  • 衝動性会議中の不用意な発言、衝動買い、感情の爆発、人間関係でのトラブル、金銭管理の困難など。

これらの特性のために、仕事での評価が上がらなかったり、人間関係で孤立したり、自己肯定感が低下してうつ病や不安障害などの二次障害を併発するケースも少なくありません。

ADHDの原因

ADHDの詳しい原因はまだ完全には解明されていませんが、これまでの研究から、生まれつきの脳機能の特性が大きく関係していると考えられています。

  • 脳の構造と機能の偏り特に、前頭前野と呼ばれる脳の部位の機能調整に偏りがあることが指摘されています。前頭前野は、思考、判断、注意、計画、行動のコントロールといった「実行機能」を司る重要な役割を担っています。ADHDでは、この部分の働きが非定型であることが、不注意や多動性、衝動性につながると考えられています。
  • 神経伝達物質の不足脳内のドーパミンノルアドレナリンといった神経伝達物質の働きが関係しているという説も有力です。これらの物質は、情報伝達や意欲、注意、集中力などに関与しており、ADHDのある人ではこれらの神経伝達物質の量が少なかったり、その働きが効率的でなかったりすることで、情報伝達がうまくいかないと考えられています。

ADHDは「育て方が悪いからなる」といったものではなく、親のしつけや環境が直接的な原因ではありません。遺伝的要因が大きく関与しており、遺伝的傾向に加えて、周産期の問題(早産、低出生体重など)や環境要因が影響することもあると言われています。

ADHDの診断と治療

ADHDの診断は、小児科医、児童精神科医、精神科医などが、発達の経過、問診、症状の現れ方、行動観察、各種検査(心理検査、知能検査など)を通じて総合的に行われます。診断基準としては、国際的なものとしてDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)やICD-11(国際疾病分類)が用いられます。

ADHDの治療は、主に「心理社会的治療(非薬物療法)」と「薬物療法」の二本柱で行われます。一人ひとりの特性や困り感に合わせて、これらのアプローチが組み合わせて用いられます。

1. 心理社会的治療(非薬物療法)

  • 環境調整本人の特性に合わせて、生活や学習、仕事の環境を工夫することです。例えば、気が散りやすい場合は静かな場所で作業する、忘れ物が多い場合はチェックリストを活用する、整理整頓が苦手な場合は物の定位置を決める、といった具体策を講じます。
  • 行動療法望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らすための支援です。褒めること(ポジティブな強化)を積極的に取り入れたり、行動のきっかけや結果を分析して改善を図ったりします。子どもには「トークンエコノミー法」などが用いられることもあります。
  • 認知行動療法(CBT不注意や衝動性から生じるネガティブな思考パターンや、それによって引き起こされる感情、行動を客観的に見つめ、より適応的な思考や行動に修正していくことを目指します。時間管理、計画立案、衝動性のコントロールなどのスキルを学ぶことも含まれます。
  • ソーシャルスキルトレーニング(SST対人関係のスキルや社会的なルールを学び、実践的な練習をすることで、コミュニケーション能力や社会適応能力の向上を目指します。
  • ペアレントトレーニング: ADHDのある子どもを持つ保護者が、子どもの特性を理解し、適切な接し方や具体的な対処法を学ぶプログラムです。
  • カウンセリング自身の特性を理解し、自己肯定感を高め、日常生活の困難への対処法を模索するための支援です。

2. 薬物療法

ADHDの症状を和らげるための薬物もいくつか開発されています。これらの薬は、脳内の神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリンなど)の働きを調整することで、不注意、多動性、衝動性の症状を改善する効果が期待できます。

  • 主に、中枢神経刺激薬(メチルフェニデート塩酸塩、アンフェタミン類など)や、非中枢神経刺激薬(アトモキセチン、グアンファシンなど)があります。
  • 薬物療法は、医師が患者さんの年齢、症状、健康状態などを考慮して慎重に処方し、効果や副作用を定期的に評価しながら進められます。

ADHDの治療は、薬物療法だけで完結するものではなく、心理社会的治療と組み合わせて行うことで、より効果的な症状の改善と生活の質の向上が期待できます。

ADHDと向き合うために

ADHDの特性は、その人の「性格」や「怠け癖」ではなく、脳の機能特性によるものです。そのため、ご自身や周囲の人が「なぜできないんだろう」と悩んだり、責めたりする必要はありません。

大切なのは、自身の特性を正しく理解し、その特性から生じる困難に対して適切な対処法を学び、必要に応じて周囲のサポートを得ることです。早期に診断を受け、適切な支援や治療を開始することで、特性を強みとして活かし、より充実した社会生活を送ることが可能になります。

もし、ご自身やご家族、身近な人にADHDの特性が疑われる場合は、一人で抱え込まず、専門機関(精神科、心療内科、発達外来など)に相談してみましょう。

 

2025-07-26 12:45:00

自閉スペクトラム症(ASD)とは?多様な特性と理解の重要性

**自閉スペクトラム症(ASDは、生まれつきの脳機能の特性による神経発達症(発達障害)**の一つです。以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」といった個別の診断名で呼ばれていましたが、現在ではこれらをまとめて「スペクトラム(連続体)」として捉え、「自閉スペクトラム症」という一つの診断名で包括するようになりました。これは、症状の現れ方が人によって非常に多様で、明確な境界線がないという考え方に基づいています。

ASDの診断基準は、主に以下の2つの領域における特性が、発達早期から見られ、社会生活に支障をきたしている場合に適用されます。

  1. 対人相互作用とコミュニケーションの持続的な欠陥
  2. 限定された、反復的な様式の行動、興味、活動

これらの特性は、乳幼児期から認められることがほとんどですが、発達段階や社会的な要求が複雑になるにつれて顕著になることもあります。

ASDの主な特性

ASDの特性は多岐にわたりますが、大きく分けて上記の2つの領域で特徴的な症状が見られます。

1. 対人相互作用とコミュニケーションの困難

  • 社会的・情緒的相互関係の困難他者との情緒的なやり取りが苦手で、喜びや興味を共有しようとしない、あるいは共有の仕方が独特です。視線を合わせることが苦手だったり、逆にじっと見つめすぎたりすることがあります。年齢に不相応な言葉遣いをしたり、一方的に話し続けたりするなど、会話のキャッチボールが難しいことがあります。人の気持ちを推測したり、場の空気を読んだりするのが苦手です。共感性が低いと見られることがありますが、内心では共感しているものの表現が難しい場合もあります。
  • 非言語的コミュニケーションの困難身振りや手振り、表情、アイコンタクトなどの非言語的な合図を読み取ったり、適切に使ったりするのが苦手です。冗談、皮肉、比喩、遠回しな表現などを文字通りに解釈してしまうことがあります。
  • 対人関係の維持・発展の困難年齢相応の友人関係を築いたり、維持したりするのが難しいことがあります。集団行動が苦手で、一人でいることを好む傾向があります。他者の視点に立って物事を考えることが難しいため、対人関係で誤解が生じやすいです。

2. 限定された、反復的な様式の行動、興味、活動

  • 常同的または反復的な動作、言葉、物体の使用体を揺らす、手をひらひらさせる、飛び跳ねるなどの常同行動が見られることがあります。同じ言葉やフレーズを繰り返し言う、エコーラリア(オウム返し)が見られることがあります。ミニカーを並べ続けるなど、特定の物体の反復的な使用が見られます。
  • 同一性への固執、慣習への融通のなさ日課やルーティン、儀式的な行動に強くこだわり、変化を嫌う傾向があります。予定が変更されることや、物の配置が変わることに強い抵抗を示すことがあります。特定の服装や食べ物、場所などに強いこだわりを持つことがあります。
  • 限定された、固定された興味特定の物事や分野に非常に強い興味を持ち、それ以外のことにほとんど関心を示さないことがあります。興味の対象が非常に専門的で、深い知識を持つことがあります(例:鉄道の時刻表、恐竜の種類、特定の電化製品など)。興味の対象について一方的に話し続ける傾向があります。
  • 感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ特定の音、光、匂い、肌触りなどに極端に敏感で、強い不快感を示すことがあります(例:特定の音が耳障り、タグが肌に触れるのが嫌)。痛みや温度に対して鈍感なことがあります。特定の感覚刺激を求め続けることがあります(例:体を強く押される感覚を好む)。

ASDの原因

ASDの詳しい原因はまだ完全には解明されていませんが、これまでの研究から、生まれつきの脳機能の特性が大きく関係していると考えられています。親のしつけや愛情不足が直接の原因ではありません。

  • 遺伝的要因: ASDになりやすい体質(脆弱性)が遺伝する可能性が指摘されています。複数の遺伝子が複雑に関与していると考えられています。
  • 脳の機能・構造の偏り脳内の神経伝達物質のバランスの乱れや、脳の特定の部位の構造や機能に偏りが生じていることが指摘されています。
  • 環境要因両親の年齢、低出生体重、低酸素、鉛暴露、妊娠中の母体感染症などが、発症リスクを高める要因として挙げられることがありますが、これらが直接の原因となるわけではありません。

これらの要因が複合的に作用して発症に至ると考えられています。

ASDの診断と支援

ASDの診断は、小児科医、児童精神科医、精神科医、臨床心理士などの専門家が、発達の経過や詳細な問診、観察、各種検査(心理検査、発達検査など)を通じて総合的に行われます。早期診断と早期介入が、その後の発達と適応にとって非常に重要とされています。

支援は、個々の特性や発達段階に合わせて多角的に行われます。

  • 療育・教育的支援:
    • ソーシャルスキルトレーニング(SST対人関係のスキルや社会的な状況での適切な振る舞いを学ぶための訓練です。
    • 構造化された教育視覚的な情報(絵カード、スケジュール表など)を多用し、見通しが持てるように環境を整えることで、混乱を減らし、学習効果を高めます。
    • 感覚統合療法感覚の過敏さや鈍感さに対する調整を促すアプローチです。
    • コミュニケーション支援言葉での表現が難しい場合には、代替コミュニケーション(PEC(絵カード交換式コミュニケーションシステム)など)の導入も検討されます。
    • 個別教育支援計画学校では、個々のニーズに応じた教育目標と支援内容を定めた計画が作成されます。
  • 心理療法・カウンセリング: ASDに直接的に作用する治療法ではありませんが、特性から生じる二次的な問題(不安、抑うつ、不眠、対人関係の悩み、自己肯定感の低下など)に対して有効です。認知行動療法などが用いられることがあります。
  • 薬物療法: ASDそのものを治す薬はありませんが、併存する精神症状(多動、不注意、衝動性、易刺激性、不安、抑うつ、睡眠障害など)を軽減するために、対症療法として薬が処方されることがあります。
  • 就労支援成人期には、自身の特性を理解し、それを活かせる職場を見つけるための支援(就労移行支援事業所など)や、職場での合理的配慮の調整が行われます。
  • 家族支援ご家族への情報提供、相談支援、ペアレントトレーニング(子どもの特性理解と適切な対応方法を学ぶ)なども重要です。

理解と多様性の尊重

ASDは病気ではなく、脳機能の「特性」です。これらの特性は、社会生活において困難となることもありますが、一方で、特定の分野への深い集中力、記憶力、論理的思考力、独特の視点など、優れた才能や強みとなることも多々あります。

重要なのは、ASDのある一人ひとりの特性を理解し、その困難さに寄り添いながら、強みを活かせるような環境を整えることです。社会全体が多様な特性を持つ人々を受け入れ、それぞれが自分らしく生きられるインクルーシブな社会を目指すことが、何よりも求められています。

もし、ご自身やご家族、身近な人にASDの特性が疑われる場合は、一人で抱え込まず、専門機関(精神科、心療内科、発達外来など)に相談してみましょう。

 

2025-07-26 12:43:00

うつ病とオンラインカウンセリング:Zoomが拓く心のケアの扉

もしあなたが、長く続く憂うつな気分や、何をするにも意欲が湧かない状態に苦しんでいるなら、それはもしかしたら「うつ病」かもしれません。うつ病は、誰にでも起こりうる心の病気であり、決して珍しいものではありません。今回は、うつ病の症状や原因、そして治療の進め方、さらに近年注目されているオンラインカウンセリング、特にZoomを活用した新しい支援の形について詳しくお話ししていきます。

うつ病とは?その症状と原因の理解

うつ病とは、精神的なストレスや身体的な要因、脳の機能の変化などが複雑に絡み合って発症すると考えられている精神疾患です。単に気分が落ち込む一時的な状態とは異なり、その症状は2週間以上にわたって続き、日常生活に大きな支障をきたします。

うつ病の主な症状

うつ病の症状は、心の症状と体の症状の両方に現れることが特徴です。

心の症状(精神症状)

  • 抑うつ気分ほぼ一日中、憂うつで悲しい気分が続く。
  • 興味や喜びの喪失これまで楽しめていたこと(趣味、仕事、人との交流など)に全く興味や喜びを感じられなくなる。
  • 思考力・集中力の低下物事を考えるのが難しい、集中力が続かない、決断できない。仕事や勉強の効率が著しく低下することがあります。
  • 自分を責める気持ち(罪悪感・無価値感)自分を責めたり、「自分は価値のない人間だ」と感じたりすることがあります。
  • 希死念慮死について繰り返し考える、自殺を企てるなどの考えが浮かぶことがあります。
  • 不安・焦燥感漠然とした不安を感じたり、イライラして落ち着かなくなったりすることがあります。

体の症状(身体症状)

  • 睡眠障害眠れない(不眠)、あるいは眠りすぎる(過眠)といった睡眠リズムの乱れ。特に「早朝覚醒」(いつもより早く目が覚めてしまう)が特徴的な場合があります。
  • 食欲の変化食欲がなくなる、または過食になる。体重の増減が見られることもあります。
  • 疲労感・倦怠感何をするにも体がだるく、疲れやすい。朝から体が鉛のように重く感じられることもあります。
  • 身体の痛みや不調頭痛、肩こり、めまい、動悸、息苦しさ、胃腸の不調など、様々な身体の不調を訴えることがあります。

これらの症状が、ほとんど毎日、2週間以上続く場合、うつ病の可能性を考える必要があります。

うつ病の原因

うつ病の原因は一つに特定されているわけではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

  • 脳の機能の変化脳内の神経伝達物質(特にセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)のバランスが崩れることが関与していると考えられています。これらの物質は、気分、意欲、睡眠、食欲などを調整する役割を担っています。
  • ストレス人生における大きなストレス(大切な人の死、離職、人間関係のトラブル、経済的な問題など)がきっかけとなることがあります。嬉しい出来事(結婚、昇進など)の後でも、環境の変化によるストレスから発症することもあります。
  • 性格的な要因真面目で責任感が強い、完璧主義、他人に気を使いすぎる、感情をため込みやすいといった性格傾向が、うつ病の発症リスクを高めることがあります。しかし、これはあくまで「なりやすさ」であり、性格が原因で病気になるわけではありません。
  • 遺伝的要因家族にうつ病の人がいる場合、発症リスクが若干高まることが指摘されています。
  • 身体的な病気や薬の副作用甲状腺機能異常やがんなどの身体疾患、あるいは特定の薬の副作用としてうつ状態が現れることもあります。

うつ病の診断と治療

うつ病は、適切な診断と治療を受けることで、症状を改善し、回復を目指せる病気です。早期発見と早期治療が、その後の回復に大きく影響すると言われています。

うつ病の診断は、精神科医や心療内科医が、患者さんの症状の経過、現在の状態、生活への影響などを詳細に問診し、国際的な診断基準(DSM-5など)に基づいて総合的に判断します。

うつ病の治療は、主に「休養・環境調整」「薬物療法」「精神療法(カウンセリング)」の三本柱で行われます。患者さん一人ひとりの状態や希望に合わせて、これらのアプローチが組み合わせて用いられます。

1. 休養・環境調整

うつ病の最も基本的な治療であり、脳と心を休ませることが何よりも重要です。

  • 十分な休養無理をして働き続けたり、活動しようとしたりせず、心身をゆっくり休ませることが必要です。仕事や家事を一時的に休んだり、量を減らしたりすることも検討されます。
  • 環境の調整ストレスの原因となっている環境要因(職場での人間関係、仕事量、家庭内の問題など)を見直し、可能な範囲で改善を図ります。必要に応じて、休職や配置転換、家事の分担など、周囲の協力を得ることも大切です。

2. 薬物療法

うつ病の症状が強く、日常生活に支障をきたしている場合には、薬物療法が有効な場合があります。

  • 抗うつ薬脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)のバランスを整えることで、抑うつ気分、意欲の低下、不眠といった症状を改善します。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)などが主流です。
  • その他の薬不眠や強い不安がある場合には、睡眠導入剤や抗不安薬が一時的に併用されることもあります。

抗うつ薬はすぐに効果が現れるわけではなく、効果を実感するまでに数週間かかることがあります。また、症状が改善しても、再発予防のために医師の指示に従い、根気強く服薬を続けることが非常に重要です。自己判断で中止せず、必ず医師と相談しながら進めましょう。

3. 精神療法(カウンセリング)

カウンセリングは、うつ病の症状軽減だけでなく、再発予防やストレス対処スキルの向上にも役立ちます。

  • 認知行動療法(CBTうつ病の回復に特に有効性が高いとされている心理療法です。ものの考え方や受け止め方(認知)の偏りに着目し、それらをより現実的でバランスの取れたものへと修正していくことで、気分や行動の改善を目指します。例えば、「〜でなければならない」という完璧主義的な考え方や、「全て自分のせいだ」という自責的な考え方を柔軟にする練習を行います。
  • 対人関係療法(IPT対人関係の問題がうつ病の発症や悪化に関与している場合に有効です。人間関係のパターンを振り返り、コミュニケーションスキルを向上させることで、対人関係ストレスの軽減を目指します。
  • 支持的精神療法カウンセラーが共感的に話を聞き、受容することで、患者さんが抱えている苦痛や不安を軽減し、自己肯定感を高めていくことを目指します。

うつ病とオンラインカウンセリング:Zoomの活用

近年、オンラインでのメンタルヘルスサポートが急速に普及しており、Zoomなどのビデオ通話ツールを用いたオンラインカウンセリングは、うつ病を持つ方々にとって非常に有効な選択肢となっています。

  • 通院の負担軽減うつ病の症状が重い時期は、外出すること自体が大きな負担となることがあります。オンラインカウンセリングであれば、自宅など慣れた環境からセッションに参加できるため、通院の心理的・物理的ハードルが大幅に下がります。これにより、治療の初期段階からスムーズにカウンセリングを開始し、治療の継続率向上にも貢献します。
  • 柔軟なスケジュール調整移動時間が不要なため、自身の体調や日課に合わせてより柔軟な時間設定が可能です。疲労感が強い時でも、無理なくカウンセリングを受けられるため、治療の中断リスクが低減されます。
  • プライバシーの確保クリニックの待合室で他の患者さんと顔を合わせることに抵抗を感じる方もいらっしゃいます。オンラインカウンセリングは自宅からアクセスできるため、プライバシーが確保されやすく、安心してデリケートな問題を話すことができます。精神疾患に対する**社会的なスティグマ(偏見)**を感じることなく、心のケアを受けられるというメリットもあります。
  • 安心感のある環境自宅という安心できる空間で話すことで、よりリラックスして心を開きやすくなります。これが、カウンセリングの効果を高めることにつながる場合もあります。
  • 地理的な制約の解消居住地の近くに専門のカウンセラーや心療内科がない場合でも、オンラインであれば全国各地の専門家のサポートを受けることが可能です。これにより、医療格差の是正にも貢献します。

Zoomオンラインカウンセリングを始める際の注意点

Zoomを使ったオンラインカウンセリングは多くのメリットがありますが、利用にあたってはいくつかの注意点もあります。

  • 安定したインターネット環境通信が不安定だと、音声や映像が途切れ、カウンセリングの妨げになります。可能な限り、安定したWi-Fi環境や有線LAN環境を整えましょう。
  • プライバシーが確保された静かな空間カウンセリングは個人的な内容を話す場です。セッション中に集中できるよう、家族や他人に話が聞かれないような、静かでプライベートな空間を確保することが重要です。
  • 使用デバイスの準備と操作の確認パソコン、タブレット、スマートフォンなど、使いやすいデバイスを用意し、事前にZoomアプリのインストールと、マイク、カメラ、スピーカーの動作確認をしておくと安心です。
  • 緊急時の対応確認うつ病の症状が重く、希死念慮がある場合など、緊急性が高い状況ではオンラインカウンセリングだけでは不十分な場合があります。緊急時にどのような対応をしてもらえるのかを、事前にカウンセリング機関やカウンセラーに確認しておくことが大切です。また、医師の診察や薬物療法が必要な場合は、対面での医療機関の受診を優先しましょう。

うつ病と向き合い、回復を目指すために

うつ病は、早期に適切な治療と支援を受けることで、回復が期待できる病気です。症状に気づいたら、ためらわずに専門医(精神科、心療内科)に相談することから始めましょう。

精神科の診察薬物療法カウンセリング、そして必要に応じた家族支援など、多様なアプローチを組み合わせることで、より良い回復を目指すことができます。そして、オンラインカウンセリング、特にZoomを活用した支援は、あなたの心のケアを、より身近で継続しやすいものにしてくれるはずです。

一人で抱え込まず、専門家の力を借りて、心の健康を取り戻し、自分らしい生活を再構築していきましょう。

 

2025-07-26 12:42:00

双極性障害とオンラインカウンセリング:Zoomがもたらす新たなサポートの形

双極性障害は、かつて「躁うつ病」と呼ばれていた精神疾患です。その名の通り、活動的で気分が高揚する「躁(そう)状態」と、気分が落ち込み活動性が低下する「うつ状態」という、対照的な二つの気分エピソードを繰り返すことが特徴です。これらの気分の波は、通常よりも明らかに極端な形で現れ、日常生活や社会生活に大きな影響を与えます。

双極性障害は気分障害の一つに分類され、適切な診断と治療を受けることで、気分の波をコントロールし、安定した生活を送ることが可能です。近年、オンラインでのメンタルヘルスサポートが広がりを見せる中で、Zoomを活用したオンラインカウンセリングは、双極性障害を持つ方々にとって、その特性に寄り添った新たな支援の選択肢となりつつあります。

双極性障害の主な病型と症状

双極性障害は、躁状態とうつ状態の重症度や頻度によって、主に以下の2つのタイプに分けられます。

1. 双極I型障害

躁状態が顕著で、社会生活に重大な支障をきたしたり、入院が必要になるほどの重症な躁状態(「躁病エピソード」)を経験します。多くの場合、その後にうつ状態(「大うつ病エピソード」)も経験します。

  • 躁状態の症状:
    • 気分の高揚、誇大性極端に気分が明るく、自信過剰になる。「なんでもできる」「自分は特別な存在だ」と感じます。
    • 活動性の増加眠らなくても平気で、次から次へと行動を起こします。エネルギッシュで、じっとしていられません。
    • 多弁止まらずに話し続けます。会話のペースが速いです。
    • 観念奔逸次々とアイデアが浮かび、思考がまとまりません。話があちこちに飛びます。
    • 注意散漫集中力がなく、すぐに気が散ります。
    • 自己評価の肥大根拠なく自分を過大評価し、無謀な計画を立てることがあります。
    • 不適切な行動衝動的な買い物やギャンブル、無計画な投資、性的逸脱行為など、社会的に問題となる行動に走ることがあります。
    • 睡眠欲求の減少ほとんど眠らなくても疲労を感じません。
  • うつ状態の症状(大うつ病エピソード):
    • 気分の落ち込み憂うつで、悲しい、絶望的だと感じます。
    • 興味・喜びの喪失以前楽しんでいた活動にも興味や喜びを感じなくなります。
    • 食欲・睡眠の変化食欲がなくなったり、過食になったりします。眠れない(不眠)か、眠りすぎる(過眠)かのいずれかです。
    • 疲労感・気力の低下何をするにも疲れやすく、体がだるいです。
    • 思考力・集中力の低下物事を考えるのが難しい、決断できない、集中できません。
    • 罪悪感・無価値感自分を責めたり、自分が価値のない人間だと感じたりします。
    • 希死念慮死について繰り返し考えます。自殺を企てることもあります。

2. 双極II型障害

双極I型障害よりも軽度な躁状態(「軽躁病エピソード」)と、うつ状態(大うつ病エピソード)を繰り返します。軽躁状態は、本人にとっては「調子が良い」と感じられ、周囲も気づきにくいことがあるため、診断が遅れるケースも少なくありません。

  • 軽躁状態の症状:
    • 躁状態と同様の症状が見られますが、その程度が軽いため、社会生活に重大な支障をきたすほどではありません。
    • 気分がいつも以上に良く、活動的で生産性が上がるように感じられることもあります。
    • 周囲からは「いつもより元気がある」「少しハイになっている」程度にしか見えないことも多いです。
    • 本人も不快感を感じないことが多いため、病気と認識されにくい傾向があります。
  • うつ状態の症状:
    • 双極I型障害と同様の大うつ病エピソードを経験します。双極II型障害では、うつ状態の期間が長く、うつ病と誤診されやすい傾向があります。

その他の双極性障害に関連する病型

  • 気分循環症双極II型障害よりもさらに軽度の気分の波(軽躁気分と軽度抑うつ気分)が、2年以上持続する状態です。気分が変わりやすいという特徴があります。
  • 混合性特徴を伴う躁病・軽躁病・うつ病エピソード躁状態とうつ状態の症状が同時に現れる状態です。例えば、気分が高揚しているのにイライラして怒りっぽくなったり、気分が落ち込んでいるのに落ち着きがなく多弁になったりします。

双極性障害の原因

双極性障害の原因はまだ完全に解明されていませんが、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

  • 遺伝的要因家族内に双極性障害の人がいる場合、発症リスクが高まることが知られています。複数の遺伝子が関与していると考えられています。
  • 脳の機能・構造の偏り脳内の神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなど)のバランスの乱れや、気分や感情を司る脳の部位(扁桃体、前頭前野など)の機能や構造に偏りがあることが指摘されています。
  • 心理社会的要因ストレス、睡眠不足、人間関係の問題、生活環境の変化などが、気分の波の引き金になったり、症状を悪化させたりすることがあります。しかし、これらの要因が単独で双極性障害を引き起こすわけではありません。

双極性障害の診断と治療

双極性障害の診断は、精神科医が症状の経過、現在の状態、生活への影響などを詳細に問診し、総合的に判断します。特に、躁状態や軽躁状態のエピソードを見逃さないことが重要です。

双極性障害の治療は、主に「薬物療法」と「心理社会的治療(非薬物療法)」の二本柱で行われます。根気強く治療を続けることで、症状を安定させ、再発を防ぐことが可能になります。

1. 薬物療法

双極性障害の治療の中心となります。

  • 気分安定薬気分の波を安定させることを目的とした薬で、躁状態とうつ状態の両方に効果が期待されます。炭酸リチウム、バルプロ酸ナトリウム、カルバマゼピン、ラモトリギンなどが代表的です。これらの薬は、躁状態を抑えるだけでなく、うつ状態への移行や再発を予防する効果も期待されます。
  • 非定型抗精神病薬躁状態や混合状態、うつ状態にも効果を示すものがあり、気分安定薬と併用されたり、単独で用いられたりすることもあります。
  • 抗うつ薬うつ状態がひどい場合に処方されることがありますが、双極性障害においては、抗うつ薬の使用により躁転(うつ状態から躁状態に移行すること)を誘発するリスクがあるため、慎重に用いられます。通常は気分安定薬と併用されます。

服薬は、症状が安定してからも再発予防のために続けることが非常に重要です。自己判断で中止せず、必ず医師の指示に従いましょう。

2. 心理社会的治療(非薬物療法)

薬物療法と併用することで、治療効果を高め、再発予防にも役立ちます。

  • 心理教育双極性障害という病気について、本人とご家族が正しく理解するための教育です。症状のサイン、服薬の重要性、再発予防のための生活習慣などを学びます。病気への理解を深めることで、治療への主体的な参加を促します。
  • 認知行動療法(CBT気分の波に関連する思考パターンや行動パターンを特定し、より適応的なものへと修正していくことを目指します。うつ状態や躁状態の前兆を認識し、対処法を身につけるのに役立ちます。
  • 対人関係・社会リズム療法(IPSRT対人関係のストレスや生活リズムの乱れが、気分の波に影響を与えることに着目し、安定した生活リズムの確立と対人関係スキルの向上を目指します。規則正しい睡眠や食事、活動が気分の安定に重要であることが強調されます。
  • 家族療法ご家族も双極性障害を抱える本人を理解し、適切にサポートするための知識とスキルを学ぶ場です。家族内のコミュニケーションを改善し、互いに支え合える関係性を築くことを目指します。

双極性障害とオンラインカウンセリング:Zoomの活用

近年、オンラインカウンセリングの普及が進み、Zoomなどのビデオ通話ツールを用いたカウンセリングは、双極性障害を持つ方々にとって新たな支援の選択肢となっています。

  • アクセスのしやすさ遠隔地にお住まいの方や、通院が難しい方でも、専門家のカウンセリングを自宅から受けられます。移動の負担(時間、交通費、身体的疲労)が大幅に軽減されるため、カウンセリングへのハードルが下がります。特に、うつ状態で外出が困難な時期や、躁状態で衝動的な行動を避けたい時期にも、安定してサポートを受けやすいという利点があります。
  • 慣れた環境での安心感医療機関やカウンセリングルームという新しい場所は、心理的な負担となることがあります。オンラインカウンセリングであれば、ご自宅など慣れ親しんだ安心できる環境でセッションに参加できます。これにより、リラックスして話すことができ、自身の感情や思考をよりオープンに表現しやすくなります。
  • 柔軟なスケジュール調整: Zoomを使ったオンラインカウンセリングは、移動時間が不要なため、自身の体調や日課に合わせてより柔軟な時間設定が可能です。気分の波によって体調が変動しやすい双極性障害の方にとって、この柔軟性は治療の継続に大きく貢献します。急な体調不良や天候不良時でも、自宅からセッションに参加できるため、セッションの中断リスクが低減されます。
  • プライバシーの確保精神疾患の治療を受けることに対して、周囲の目が気になる方もいらっしゃるかもしれません。オンラインカウンセリングは自宅からアクセスできるため、プライバシーが確保されやすく、安心してカウンセリングを受けることができます。
  • 家族との連携の容易さ双極性障害の治療には、ご家族の理解と協力が不可欠です。Zoomを用いたオンラインカウンセリングであれば、必要に応じてご家族が同席しやすくなります。ご本人の状態についてご家族が補足したり、カウンセラーからご家族へ直接、具体的な関わり方やサポート方法についてアドバイスしたりすることも容易です。これにより、家族全体のサポート体制を強化し、カウンセリングの効果を最大限に引き出すことが期待できます。

双極性障害と向き合い、安定した日常を目指すために

双極性障害は、慢性的な経過をたどることが多いですが、適切な治療を継続することで、症状をコントロールし、充実した日常生活を送ることが十分に可能です。

早期発見早期治療はもちろんのこと、自身の気分の波のパターンを理解し、ストレス管理規則正しい生活リズムの維持、そして服薬の継続が非常に重要です。また、再発のサインを早期に察知し、悪化する前に専門家へ相談できる体制を整えておくことも大切です。

精神科の診察カウンセリング心理療法、そして家族支援など、多様なアプローチを組み合わせることで、より良い回復を目指すことができます。そして、オンラインカウンセリング、特にZoomを活用した支援は、これまでの治療の選択肢を広げ、より多くの人が必要なサポートを受けられる可能性を拓いています。

もし、ご自身やご家族、大切な人が双極性障害の症状に心当たりがある場合は、一人で抱え込まず、精神科医や専門機関に相談してみましょう。専門家のサポートを得ながら、気分の波と上手に付き合い、安定した日常を取り戻すための道を一緒に見つけていきましょう。

 

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