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妄想性障害の方にカウンセリングができること
「真実かどうか」ではなく、「その人の現実」に寄り添う支援を
「誰かに監視されている」「パートナーが裏切っている」「隣人が悪意を持っている」
そういった強い思い込みを、周囲がどんなに否定しても変えることができない——
このような状態が続くと、「もしかして妄想性障害(パラノイア障害)では?」と考えることがあります。
しかし、妄想性障害は他の精神疾患と違って**「妄想以外には比較的問題がない」**ことが多く、なかなか病気として認識されづらいのが現実です。
「被害妄想」や「根拠のない疑い」と表現されることもありますが、本人にとってはリアルで切実な“現実”。
本記事では、妄想性障害の特徴と、カウンセリングがどのように役立つのかを、専門的かつ丁寧に解説します。
妄想性障害とは?特徴と症状
妄想性障害は、統合失調症のような幻覚や著しい思考混乱は少ないものの、現実には根拠がない強固な妄想が長期間続く精神疾患です。
特に多いのは以下のような妄想です。
● 被害妄想
自分が誰かに監視されている、盗聴されている、悪意を持って狙われていると信じている。
● 嫉妬妄想
パートナーが浮気しているという確信を持ち、証拠がなくても疑い続ける。
● 恋愛妄想
相手は自分に好意を持っていると思い込み、相手の迷惑を無視して接触しようとする。
● 誇大妄想
自分は特別な存在、あるいは世界を変える力があると確信する。
● 物盗られ妄想(特に高齢者に多い)
家族や介護者が自分の物を盗んでいると思い込む。
妄想の内容は一貫していて論理的であることも多く、妄想以外の精神的な異常が見られないため、周囲は「本気でそう思っているとは思わなかった」と戸惑うことが多いのです。
妄想は「本人にとっての現実」
妄想性障害の最も難しい点は、妄想が本人にとっては完全に現実であるということです。
周囲が「そんなことあるわけない」「考えすぎだよ」と言えば言うほど、本人は「自分を否定された」「真実を隠そうとしている」と感じ、防衛的になっていきます。
このような関係性の悪化が続くと、
- 他人を信じられなくなる
- 孤立が進む
- 攻撃的・過敏になる
- 社会生活が立ち行かなくなる
といった二次的な問題を引き起こしてしまいます。
そのため、妄想性障害におけるカウンセリングでは、**「妄想を否定すること」よりも、「妄想を通して見えてくる不安や孤独、背景を理解すること」**が重視されます。
妄想性障害におけるカウンセリングの意義
「妄想は変えられないのに、カウンセリングで何ができるの?」と疑問を持たれるかもしれません。
しかし実際には、妄想性障害の方にとってカウンセリングが果たす役割はとても大きいのです。
以下に、その主な内容を紹介します。
1. 安心して話せる「安全な場」を提供する
妄想性障害の方は、周囲に対して強い不信感を抱いている場合が多く、人と安心して話すことが困難です。
カウンセラーは、評価や否定を避け、**「どんな内容であっても一度は受け止める」**という姿勢を大切にします。
これにより、「この人には本音を話しても大丈夫かもしれない」という信頼感が少しずつ育まれます。これは回復の第一歩です。
2. 妄想を「扱える思考」に変えていく支援
妄想を「真実かどうか」で争うのではなく、
- 「その妄想が自分にとってどんな意味を持っているか」
- 「それによってどんな気持ちになっているか」
- 「その気持ちを穏やかに保つにはどうすればよいか」
というように、妄想を“対話の入り口”にする形で心を扱っていきます。
「あなたの考えは間違っている」ではなく、「その考えの奥にどんな気持ちがあるのか」を一緒に探る姿勢が、長期的な安定につながります。
3. 被害感情・怒り・孤独感への対処法を学ぶ
妄想性障害では、他人に対する不信や怒り、絶望感などが強くなることがあります。
- 「家族が信じられない」
- 「職場の人が自分を貶めている気がする」
- 「誰も自分の味方をしてくれない」
こうした気持ちは、妄想そのものよりも、本人の心に深い傷を残すことがあります。
カウンセリングでは、感情を安全に吐き出す場としての機能を果たしながら、怒りや不安の扱い方、ストレスコントロールなども支援します。
4. 周囲との関係改善のサポート
妄想の内容が家族や職場の人など身近な他人を巻き込むことが多いため、関係性の悪化が問題になるケースも少なくありません。
カウンセリングでは、
- 家族への伝え方
- トラブルが起きたときの対応方法
- 誤解を和らげるコミュニケーション
などを一緒に考え、現実生活の中で孤立を防ぐ工夫を支援します。
ご家族・周囲の方への支援も重要
妄想性障害は、本人だけでなく家族も精神的に疲弊しやすい病気です。
- 否定しても聞く耳を持たない
- 疑いの目を向けられてつらい
- どう接してよいかわからない
- 援助しようとしても拒絶される
そうした困りごとを抱えているご家族のために、NEEDROOMではご家族向けのカウンセリングも行っています。
第三者に話すことで視点が整理され、支える側のストレスも軽減されます。
カウンセリングは「時間をかけて信頼を築く」支援
妄想性障害の方とのカウンセリングは、信頼関係を築くまでに時間がかかることがあります。
しかし、その時間こそが心の距離を縮めていく過程であり、急がず、少しずつ前進する姿勢がとても大切です。
NEEDROOMでは、
- 否定せずに話を聴く姿勢
- 受容的であたたかい関わり
- 医療機関と連携したサポート体制
- ご本人とご家族、両方への支援
を通じて、安心してカウンセリングに臨める環境を整えています。
NEEDROOMの特徴
- 全国対応のオンラインカウンセリング(移動不要)
- 匿名相談可、必要に応じて継続利用可
- 精神疾患に理解のある臨床心理士・公認心理師が対応
- ご家族・支援者向けカウンセリングも実施
「本人が通院を拒否しているけど何かできることは?」
「妄想のせいで家族関係が悪化している」
「誰にも相談できない苦しさがある」
そのようなときは、どうぞNEEDROOMにご相談ください。あなたの悩みを、私たちは否定せずに丁寧に受け止めます。
まとめ:妄想性障害への理解と寄り添いは「信頼」から始まる
妄想性障害は、目に見えづらく、理解されにくい苦しさを伴う病気です。
しかし、**「わかろうとしてくれる人がいる」**という経験が、回復への希望となります。
カウンセリングは、妄想そのものを否定するのではなく、その人の現実を大切にしながら、「一緒に考える関係」を築いていく場です。
NEEDROOMは、本人・家族ともに安心できる支援の場を提供し、一人ひとりの心に寄り添いながら、無理のない回復をサポートします。
あなたが「話してみようかな」と思ったときが、第一歩です。どんなお悩みも、安心してご相談ください。