ブログ
「私だけが苦しい」と思い込む心に、話を聞いて「違うよ」と伝えることの大切さ
精神的につらいとき、「自分だけが苦しんでいる」と感じてしまう
心の不調を抱えている人の多くは、周囲の人にうまく相談できず、ひとりで悩みを抱えています。
それだけでもつらいのに、さらに「こんなことで悩むなんて、自分だけかもしれない」「私はおかしいのかな」と、自分を責める気持ちが強くなることがあります。
実際に、精神疾患の相談の現場では、次のような言葉がよく聞かれます。
- 「周りの人は普通にできているのに、なんで自分だけ…」
- 「こんなことで苦しんでるのは私くらいじゃないかと思う」
- 「迷惑をかけたくないから、誰にも言えない」
これは決して特別なことではなく、**心の病を抱えたときによく起きる“思い込み”や“孤立感”**です。
その背景には、無理解や偏見、そして「弱音を吐いてはいけない」という社会の空気も影響しています。
だからこそ、私たちカウンセラーや支援者の役割は、その思い込みを優しく揺るがし、「あなたは一人じゃない」「そう感じるのは当然のこと」と伝えることにあるのです。
「私だけ?」という思い込みが生まれる理由
人が「自分だけが苦しい」と感じてしまう理由には、いくつかの心理的要因があります。
1.比較の罠に陥りやすい
SNSや周囲の人の様子を見て、「みんな普通に生活している」「仕事も家事もちゃんとこなしている」と感じると、自分の不調が際立って見えてしまいます。
表面だけを見て比較してしまうと、自分だけが取り残されたように感じてしまいます。
2.心の不調は“見えない”ために誤解されやすい
風邪やケガとは違って、精神疾患は外からは分かりにくいものです。
そのため、「こんなにつらいのに誰にも伝わらない」「理解されない」と感じやすくなります。
共感されることが少ないと、「自分はどこかおかしいのでは?」という思考が強まっていきます。
3.真面目で責任感が強い人ほど、自分を責めやすい
精神的に不調をきたす方の中には、周囲に気を使いすぎたり、完璧を求めて無理をしてしまう方が多くいます。
だからこそ、「できない自分」「迷惑をかける自分」を許せず、自分を孤独に追い込んでしまう傾向があるのです。
話を「きちんと聞く」ことが、心の救いになる
そんなとき、何よりも必要なのが「話を聞いてくれる人の存在」です。
誰かに話をすることで、
- 思い込みに気づける
- 感情を言葉にできる
- 自分を少し客観視できる
- 気持ちが整理され、少し軽くなる
といった効果があります。
特に、否定せず、評価せず、共感的に話を聞いてもらえることで、**「こんなふうに感じていいんだ」「これは自分だけじゃなかったんだ」**と、安心感が生まれます。
私たちカウンセラーは、相談者の言葉のひとつひとつに丁寧に耳を傾けながら、その背景にある感情や葛藤を理解しようとしています。
そして、「あなたの感じ方は自然なこと」「このように感じる人は他にもたくさんいます」と伝えることで、“孤独な心”に光を当てるお手伝いをしています。
「違うよ、一人じゃないよ」と伝えることの大切さ
誰かに話をしたときに、「あなたは間違ってないよ」と受け止められた経験は、何よりも心強いものです。
「そう感じて当然ですよ」
「似たような悩みを抱えている人は実はたくさんいますよ」
「あなたはおかしくなんかありません」
このような言葉は、簡単なようでいて、実は心に大きな影響を与えます。
それまで「自分だけがおかしい」と思い込んでいた人にとって、「他にもいる」と知るだけで、安心と希望が生まれるのです。
ただし、それは単なる慰めではありません。実際、うつ病や不安障害、適応障害、パニック障害などは、誰でもなりうるものです。
そして、悩みながらも日々を過ごしている人は、想像以上に多くいます。
私たちは、そうした事実とともに、「あなたは一人ではない」ということを丁寧に伝えるようにしています。
勇気づけることは、前を向く力になる
カウンセリングの現場では、話を聞くだけでなく、勇気づけることも重要な役割です。
勇気づけとは、無理に前向きな言葉を投げかけることではありません。
「今のあなたでも大丈夫」「ここに味方がいる」と感じてもらうことです。
心が弱っているとき、人は「がんばれ」と言われるだけでプレッシャーに感じてしまいます。
だからこそ、私たちはその人の今の状態を認め、無理のないペースで進めることを大切にしています。
- 少し笑えた
- ご飯が食べられた
- 寝つきが少し良くなった
- 人と会うことができた
そのどれもが、小さな前進です。
そうした変化を一緒に見つけ、言葉にしていくことが、次の一歩を踏み出す力になります。
「話せる場所」があるだけで、人は変わる
精神疾患に限らず、心の問題は見えにくく、理解されにくいものです。
だからこそ、「安心して話せる場所」「何を言っても否定されない場所」が必要です。
私たちは、そのような場所を提供するために、日々カウンセリングに向き合っています。
- 人に話すのが怖い
- 何から話していいか分からない
- 話したら泣いてしまいそうで不安
そんな気持ちもすべて大切に受け止め、ゆっくりと心の荷物を下ろせるような時間をつくっています。
ひとりで抱え続ける必要はありません。
誰かに話すことで、「自分を責める気持ち」から解放されることがあります。
まとめ:「私だけじゃなかった」と思えたとき、心は少し軽くなる
精神疾患を抱える人の多くが、「私だけがこんな思いをしている」と感じてしまいます。
その思い込みは、孤独や不安をさらに深めてしまう原因になります。
だからこそ、私たちはその声に耳を傾け、
「あなたは一人じゃない」
「同じように感じている人は他にもいる」
「それはおかしなことではない」
と伝えることを大切にしています。
そして、話を聞くだけで終わらず、その人の強さや小さな変化に目を向け、勇気づけていく。
それが、私たちのカウンセリングの原点です。
「話すこと」は、ただの会話ではありません。
心を回復させるための、最初の一歩です。
もし今、誰にも話せずに苦しんでいるなら——
私たちは、あなたの話に丁寧に耳を傾ける準備ができています。
一人で抱えないでください。
話すことで、きっと見える景色が変わっていきます。